財布を拾った後の正しい対応は? 届けた後の扱いまで弁護士が解説
街を歩いていると、道端に財布のような落とし物を見つけて、思わず足を止めた経験がある人もいるかもしれません。
「落とした人はきっと困っているはず」と拾ったものの、警察に届けるべきか、それとも持ち主が戻ってくるかもしれないのでその場に置いておくべきか、迷ってしまうこともあるでしょう。
善意からの行動であっても、思わぬトラブルにつながってしまうことがあります。
財布を拾った時の正しいルールとは
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アディーレ法律事務所の島田さくら弁護士に、財布を拾った際の適切な対応や、陥りやすい意外な落とし穴について話をうかがいました。
――落とし物を拾った場合、法律上どのような対応義務がありますか?また、持ち主が現れない場合はどのように扱われるのでしょうか?
2024年(令和6年)に届けられた落とし物は警視庁だけでも約440万件に上ります。毎日非常に多くの落とし物が届けられており、拾得者は速やかな届け出が必要です。
お店や駅などの施設で拾った場合は、その施設の管理者に渡し、それ以外の場所では警察署に届けましょう。警察に届けると『拾得物件預り書』が交付されます。
持ち主が判明した場合、落とし物は返還され、持ち主は拾得者に対して『遺失物法』に基づき、報労金として落とし物の価格の5%〜20%を支払わなければなりません。
ただし、24時間以内に施設へ渡さなかった場合や、1週間以内に警察へ届けなかった場合は、報労金を請求できません。
持ち主が不明の場合、警察は落とし物の種類や特徴、拾った日時や場所を公告し、一定期間保管します。
――持ち主が一定期間現れなかった場合、拾った人に所有権が移りますか?
拾得者に所有権が移るのは、公告後3か月間持ち主が現れなかった場合です。ただし、傘や衣服などの日用品は公告から2週間で売却される場合もあります。
一方、スマートフォンや身分証など個人情報を含む物品、大麻や覚せい剤などの違法薬物は拾得者に権利が移らず廃棄されます。
注意したいのは、拾特者が権利を得て2か月以内に引き取りを完了しないと、所有権は失われる点です。
――『善意でその場に戻す』という行為には、法律上の問題が生じる可能性はありますか?
拾った以上、形式上は遺失物法による提出義務が生じるため、元の場所に戻すと違反に当たる可能性があります。
特に財布などの貴重品に触れた場合、防犯カメラの映像からあらぬ疑いをかけられるといったトラブルに巻き込まれるリスクも否定できません。
「持ち主が探しに戻ってくるかも」「提出しに行くのは面倒だな」という気持ちもあるかもしれませんが、一度拾ってしまったのであれば、必ず警察や施設に届けましょう。
――拾った財布の中身を見たり移動させたりした場合、どこから違法行為になるのでしょうか?
財布の持ち主を確認するために中身を見るだけなら、違法ではありません。また、警察や施設に提出するために、財布をその場から移動させることも問題ありません。
しかし、現金を抜き取ったり、財布を自宅に持ち帰って届け出をしない場合は、『窃盗罪(10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)』や『遺失物横領罪(1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金)』に該当します。
違法となる境界は『不法領得の意思』、つまり他人を排除して落とし物を自分のものとして利用しようという意思が認められるかどうかです。
困っている誰かを救うために私たちができること
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ふとした善意がトラブルにつながらないよう、正しいルールを知っておくことが大切です。
もし財布のような大切な落とし物を拾ったら、迷わずしかるべき場所へ届けることを心がけたいですね。
それが、持ち主の安心にも、自分自身の安心にもつながっていくはずです。
[文・取材/LUIS FIELD構成/grape編集部]
退職代行、不当解雇、パワハラなどの労働問題全般に精通。在日ASEAN加盟国大使館の領事担当官に対し、民間の法律事務所初となる労働法講演を行った実績を持つ。
TVやラジオ、雑誌などメディアの出演歴も長く、幅広い分野への対応力にも定評がある。
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