『半分姉弟』で描く”ハーフ”の葛藤… オダウエダ植田が書評寄せる【このマンガがすごい!オンナ編1位】
grapeでは、お笑いコンビ『オダウエダ』の植田紫帆さんとコラボした書評の連載企画を実施中!
漫画を愛してやまない植田さんによる選りすぐりの漫画を、毎月1作品ずつ紹介してもらいます。
前回は植田さんが敬愛する、宮崎夏次系先生が手掛ける短編集『と、ある日のすごくふしぎ』について書評を書いてもらいましたが、第6回となる今回は特別編!
grapeマンガ編集部が選んだ数作品の中から、植田さんが「話題になっているけれど、実はまだ読んだことがない…」という作品について書評を寄せてもらいました。
画像提供:吉本興業株式会社
『ハーフ』の葛藤描く『半分姉弟』オダウエダ植田が寄せる想い
※作中の一部シーンに人種や民族に基づく偏見や差別の描写が含まれます。ご自身の気持ちと相談して読んでいただくようお願いいたします。
今回はgrapeスタッフさんがおすすめする、『私がまだ読んだことのない作品を読む企画』第一弾です!!
話題になっているのに読み損ねていた作品が沢山あるのでとてもありがたい企画です!
読ませて頂いたのは「このマンガがすごい!2026 オンナ編1位」「CREA夜ふかしマンガ大賞2025」にランクインした『半分姉弟』です。
「『ハーフ』の葛藤と苦悩、そして希望を鮮やかに、そして身近に描いた群像劇」です。
ここで言う『ハーフ』とは「両親のどちらかが外国籍を持つ人の呼称」を指します。
最近、『ハーフ』という表現の使用は避けられてきていますよね。
アメリカでは『ハーフ』という言葉には「半分」「半人前」というネガティブな意味があるので『ハーフ』は不適切とされているらしいです。
アメリカでは『ダブル』と表現したりするらしいですが、こちらの表現も好ましくないことがあるようで、では『ミックス』だとまたネガティブな表現が含まれるみたいです。
このようにとても繊細なものとなってしまっている、『ハーフ』というものを正面から描くのがこちらの『半分姉弟』という作品です。
オムニバスなので毎回主人公は変わるのですが、第一話は、母が日本人、父がフランス人の両親を持つ九州育ちの姉弟の姉、米山和美マンダンダが主人公。ある日、弟から父親の苗字であり、自らの名前にも使われている「マンダンダ」を戸籍から消して改名したという話をされる。
©︎藤見よいこ/トーチweb
普段はWEBライターとして、アフリカ系女子という『ハーフ』キャラとしてお調子者を貫いている。
しかし、弟のアイデンティティである名前を改名したという告白にショックを隠しきれないがこの悩みは誰にも共有できない。
仕事仲間であり、友人のカメラマン・シバタにも話せず苦悩する。
©︎藤見よいこ/トーチweb
ここまでが第一話の前半なのですが、ここだけでもハッとすることの連続でした。
小さい頃に「『ハーフ』の人ってかわいいな。お父さんお母さん外国人ってかっこいいな」と単純に考えていた自分に刃を突きつけられるような感覚を味わいました。
大人になるにつれてそんな簡単な話ではないとわかってきたのですが、子供の頃の自分にこの作品を読ませて早く気付かせたいと思いましたね。
大人になっても知らなかったことも沢山でして、「『ハーフ』だから」と日本も、もう一つの外国のルーツの方も、どちらの知識も詳しいと思われてしまうということ。
見た目だけ、名前だけで、『外国人・日本人』のどちらにも勘違いされてしまう。しかも、それは受け手の悪意善意関係なく。
主人公がふと絵本を手にしたら、おばあちゃんに「ガイジンさん、日本語のお勉強?偉いわねぇ」と言われてしまうシーンがあります。
©︎藤見よいこ/トーチweb
これは向こうからしたら悪意なんてこれっぽっちもないわけです。
ただ少し主人公が傷つく。
『ハーフ』である方はこういったコミュニケーションの齟齬を数えきれないほど経験しているのだと気付かされました。
そして主人公はどちらにも属しきれない寂しさを抱えることになります。
そんな中、主人公がシバタといる時に、ずっと主人公に注視する男性から急に「あんた…純粋な日本人じゃないな」と声をかけられてしまいます。
©︎藤見よいこ/トーチweb
更にシバタの「女だから舐めてんのかな?あるよなーそういうこと」という良かれと思って言った言葉で、主人公の今まで心に抱えていた『ハーフ』への葛藤があふれてこぼれだしてしまいます。
シバタもマンダのことを『ハーフ』の、なんてみてないからこそ、むしろシバタにはわからないよな、と主人公の思いがこぼれます。
©︎藤見よいこ/トーチweb
二人の間には生まれという大きな壁で隔たりが生まれそうになるのですがシバタがマンダの思いを受け止め、「マンダのことわかんないんだってわかったよ、だからうちらもう大丈夫だよ」「いちいち話そ、大丈夫に近づけてこ。
わたしはどんだけマンダのこと傷つけてもふたりでいたいんだ」と話します。
©︎藤見よいこ/トーチweb
私も主人公と同じく「ラブだぜ!!シバタ」と心で叫びました!
わかりあえないをわかりたい。
この作品の根幹はここでございます。
本当にわかることは無いかもしれないけど、わかろうとする。わかりたいと思う。
どんな生まれでも、お互いその気持ちがあれば、お互いに少しずつ生きやすい世界になると教えてくれた作品でした。
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[文/植田紫帆構成/grape編集部]