【考察】息をするのを忘れた緊張感たっぷりの攻防戦 『夫に間違いありません』第8話
SNSを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、イラストレーターの渡辺裕子(@satohi11)さん。
2026年1月スタートのテレビドラマ『夫に間違いありません』(フジテレビ系)の見どころを連載していきます。以下、ネタバレが含まれます。
渡辺裕子さんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。
紗春(桜井ユキ)の夫を殺したのは紗春自身だったことに気がついた聖子(松下奈緒)は、彼女にプレッシャーをかけ、自分から遠ざけるように仕向ける。
紗春が店に働きに来なくなったことでホッとした聖子だったが、スクープ記事を書きたい週刊誌記者の天童(宮沢氷魚)が二人それぞれに近づいてきた。
天童は聖子には紗春の秘密を、紗春には聖子の秘密をチラつかせて、自分に相手の情報を流すようにそそのかす。
天童の提案に乗った紗春は聖子の店に戻り、聖子の留守中に家の中から一樹(安田顕)が生存している証拠を探し出そうとするが、見つけられずに終わった。
しかしその後、紗春は聖子の姑のいずみ(朝加真由美)から、彼女が聖子に内緒にしている話を聞き出して…。
仲のいい親友だったかもしれない妻同士の戦い
紗春の秘密を知り、一気に優位に立ったはずだった聖子。
これ以上近づいたらバラすぞと無言で見つめる松下奈緒さんの光の消えた大きな目、あんな瞳で微笑まれたら、私なら恐怖のあまり回れ右して、2度と彼女の前に現れない。
しかしあの迫力に負けず、天童に情報を流すためにおでん屋にまたやってきて、いつのまにか聖子を自分のペースに巻き込んでしまう紗春、いろんな意味でコミュニケーション力が強すぎる。
意外だったのが、夫と一樹の遺体が取り違えられたのを、紗春がここまで気がついていなかったこと。
最初からわかっていて、遺体が夫だと暴くために聖子に近づいたんだと思っていた。
だとしたら、紗春が人懐っこく距離を詰めていたのは、ただ聖子と仲良くなりたかっただけなのだろうか。
「夫を亡くした者同士」みたいなシンパシーをひそかに感じていたのだろうか。
これまで感じていた彼女のあやしさは、秘密を知られないようにとビクビクしている聖子の、心のフィルターを通して見ていたからだったのか。
普通に知り合っていれば、おっとりとした聖子と、はっきりした性格の紗春は、案外気があって、仲のいい親友になれていたかもしれない。
しかしお互いの秘密を知ってしまったふたりは、もう友だちではいられない。
ランチで賑わうおでん屋で、静かなバトルがスタートした。
紗春に店を辞めてもらいたくて、遠回しに秘密を知っていることを匂わせる聖子と、こちらも秘密を掴んでいるぞと匂わせ返す紗春の、言葉での殴り合いのような対決、ヒリヒリして緊張感たっぷり、見ていて息をするのを忘れそうだった。
そこからの天童に指示されて紗春が探すことになった、一樹の携帯電話の契約書をめぐる攻防にもハラハラした。
冷蔵庫の電源を抜いて、聖子を氷を買いに走らせた紗春の先制攻撃は巧みだった。
しかし、契約書をラップの箱に隠していた、聖子の守りの堅さが勝った。
聖子は自分の家族を守るために(善悪は別として)本当にがんばっている。
そんな彼女のがんばりを無駄にするのは、やっぱり一樹。
ひとりで遠くに逃げるのかと思ったら、まだ家族の生活圏内でうろうろしていたとは。
それどころかまさか、母親からおこづかいをもらっていたとは。どこまでクズさを増していく気なんだ一樹。
そんな一樹をやっと見つけた天童の瞳は、狂気に満ちていた。
新聞記者に戻りたいとスクープを焦る彼は、いずみの通うデイケア施設に嘘をついて侵入までした。
その強引な取材は、いろいろな人々の恨みを引き寄せている。
以前は光聖(中村海人)に掴みかかられてケガをしていたが、今回は一樹を幼い子どもだと思い込み、いじめっ子から守ろうとするいずみに噛みつかれた。
彼はこれからも、狂ったように常軌を逸した取材を続け、記事にされたくない人たちから反撃を受けるだろう。次に天童を襲うのは、追いつめられた紗春かもしれないし、聖子かもしれない。
そして今度こそ、ケガでは済まないかもしれない。
いつか彼の死体が見つかったという記事があの週刊誌に載るようなことがあったら…取材はあの騒がしいカメラマン・薩川(大朏岳優)が担当するのだろうか。
爽やかな好青年役の印象が強い宮沢氷魚さんだが、こんなワルい役もできるとは。
それにしても年老いた母にまですがる一樹がクズすぎる。
このあたりで一樹に死んだら、すべて丸く収まるのに…と思うほど、一樹のクズが積もり積もって山盛りになっている。
しかしこの、こんな夫がいなくなっても別にいいんじゃないか、と思わせるのも制作側の偽の手がかりのような気がしている。
こうなったら最終回、全員がつかまったのになぜか一樹だけ無事に逃げてしまうとか、びっくりする展開も見てみたい。
[文/渡辺裕子構成/grape編集部]