『鋼の錬金術師』はここが素晴らしい! オダウエダ植田の心に刻まれた“一生モノの名言”【書評】
grapeでは、2025年9月からお笑いコンビ『オダウエダ』の植田紫帆さんとの書評連載企画を開始!
漫画を愛してやまない植田さんによる選りすぐりの漫画を、毎月1作品ずつ紹介してもらいます。
画像提供:吉本興業株式会社
『鋼の錬金術師』の魅力をオダウエダ植田紫帆が紐解く
『等価交換』という言葉はこの漫画で学びました。
子供の頃、本屋さんでアニメの予告が流れているところから知り、OPからEDの爆裂ヒットナンバーの数々。映画に再アニメ化。
同年代ならどハマりした人も多いことでしょう。
今回はダークファンタジーの金字塔、『鋼の錬金術師』でございます。
錬金術というものがある世界。
兄のエドワード・エルリックと弟のアルフォンス・エルリック、二人の兄弟が亡き母親を禁忌である人体錬成により甦らせようとするが、錬成は失敗し、その代償として兄・エドは左足、弟・アルは肉体を失う。
エドは自らの右手と引き換えに弟の魂の錬成をし、鎧に定着させる。
右手と左足が鋼の義肢『機械鎧(オートメイル)』の兄と全身鎧姿の弟が、失ったすべてを取り戻すべく、錬金術の等価交換の法則を超越する完全物質・賢者の石を探す旅へと出る。
©Hiromu Arakawa/SQUARE ENIX
ダークファンタジーといえども、暗い空気は無く、エド、アルや多彩な登場人物たちのおかげで明るい読み口ではあります(『ハリー・ポッター』もファンタジーと言ってますけどシリーズ第4作『炎のゴブレット』ぐらいからめちゃくちゃ暗いですからファンタジーだからといってそんな明暗の差は無いかもしれません)。
たださすがダークファンタジーと言える衝撃的な展開が時々挟まり、当時の子供心をぶしぶしと突き刺してきて、印象的なシーンは今もなお語り継がれています。
ネットに触れている方なら「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」という言葉は一度は耳にしたことがあると思います。
Xのリプライとかでよくこのセリフが使われてますけどここめちゃくちゃショッキングなシーンなんです。国家錬金術師の資格を剥奪されそうな男が「なんとか評価される研究をしないといけない」と追い詰められ、自分の●と●を錬成して●●●を作るという、血も涙もないサイコパス野郎ですから。
©Hiromu Arakawa/SQUARE ENIX
他にも心に残るシーンが沢山出てきます。
初期からエルリック兄弟を助けてくれていたマース・ヒューズが何者かに命を奪われてしまい、その墓参りにきたロイ・マスタングの「いかん、雨が降って来たな」というセリフ。
親友であるヒューズの死を悲しむ涙を隠すためにマスタング大佐がこのセリフを呟くのです。
©Hiromu Arakawa/SQUARE ENIX
とってもかっこいいです。
私も舞台上で汗びしょびしょになった時に言ってみたいものです。
「偽善で結構!!やらない善よりやる偽善だ!」というセリフもハガレンの名台詞として有名です。
エルリック兄弟の幼馴染、ウィンリィ・ロックベルの両親であり、医者であるロックベル夫妻が敵の怪我人を治療し、「偽善者」と罵られた時に父のユーリが言ったセリフです。
©Hiromu Arakawa/SQUARE ENIX
こちらのセリフもとてもかっこいいです。
私もライブの平場で要らぬボケをやる時に言いたいです。
「やらない善よりやる偽善」
それで滑ったら…。
「いかん、雨が降ってきた」
と言って帰ります。早めに。
『鋼の錬金術師』は数多くの人間の心に残る名作です。
錬金術を通して、命とは、世界とは、生きるとは何かを我々に語りかけてくれます。
命の尊さを真正面から映すからこそ時に残酷で時に美しく、何年経っても人々の心から消えないのだとおもいます。
©Hiromu Arakawa/SQUARE ENIX
私はこの作品が数多ある漫画の中でも、27巻という短い巻数で魅力的かつ広大なストーリーを見せてくれて、ラストの結末で見事に締める、始まりと終わりの、決着の付け方がトップクラスに素晴らしい作品だと心から感じております。荒川先生が、育児もしながら執筆されていたと知って、先生がなにより『鋼』だと思います。
先生の他の作品の『銀の匙』『黄泉のツガイ』もとても面白いので是非ご覧くださいませ!
鋼の錬金術師 1巻 (デジタル版ガンガンコミックス)
荒川弘 (著)
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前回(第6回)の書評はこちら
[文・構成/grapeマンガ編集部]