「風向きは上?下?」「設定は冷房?除湿?」 夏場のエアコン『節約のコツ』を家電のプロに聞いた
夏はエアコンが欠かせない時期です。昨今は夜でも暑い日が多く、24時間つけっぱなしも珍しくありません。
そうなると気になるのが電気代。できるだけ電力を抑えながら使いたいところです。
そこで、暑い夏に実践したい『エアコンの省エネ術』を、東京電力エナジーパートナー株式会社(以下、東京電力エナジーパートナー)の中村剛さん、通称『家電王』にうかがいました。
自宅のエアコンの『省エネ性能』をチェック
――省エネにつながるエアコンの使い方を教えてください。
エアコンの省エネにつながる使用方法の前にぜひ知ってもらいたいのが、『エアコン2027年問題』です。
ニュースなどでも紹介されたので、耳にしたことがある人もいるかもしれません。
――『エアコン2027年問題』とは、なんなのでしょうか。
経済産業省では、エネルギー消費効率を特に改善する必要がある機器について、省エネ基準の目標値を設定しています。
エアコンの目標値は定期的に改正されてきましたが、実は2006年に『2010年度目標』に改正されてから、東日本大震災の影響などもあり、長らく見直しが行われませんでした。
ようやく、2022年に『2027年度、または2029年度を目標年度とする新たな省エネ基準』が公布されたため、メーカーはこの新しい省エネ基準を満たすことが求められます。
ただし、基準値を満たさない製品の製造・出荷を禁止するものではなく、メーカーが年度ごとに出荷する製品全体で基準値を満たせばよいのです。
つまり省エネ性能が高い製品と低い製品を販売している場合には、出荷台数を踏まえた平均値で評価されます。
こうした理由を踏まえ、エアコンが品薄になったり、性能を向上したことでエアコンの価格が上がったりするだろうという一連の動きを『エアコン2027年問題』と呼びます。
――『エアコン2027年問題』は、省エネにどのようにつながるのでしょうか。
品薄や価格の上昇といったことがいわれていますが、私は省エネ法の目的を鑑みて前向きな変化だと考えています。
新基準を満たす性能のエアコンを使用すれば、家庭でのエネルギー使用量を抑えられるからです。
エアコンの省エネ性能を示す指標に『APF』(通年エネルギー消費効率)があります。消費電力量1kWh当たりの冷房・暖房の性能を示しており、数値が高いほどよくなります。
今回の新たな省エネ基準では、例として『APF』の基準値が6畳用(冷房能力2.2kW機)は5.8から6.6、14畳用(冷房能力4.0kW機)は4.9から6.6へと引き上げられました。
一例ですが、10年前の製品と比較すると、約13%の省エネになります。年間電気代では3,630円お得になる計算です。
出典:一財)家電製品協会 2026年度版スマートライフおすすめBOOK
買い替えとなると、やはり値段が気になりますが、性能がよければそれだけエネルギー消費も抑えられ、結果的に省エネにつながります。
実は家庭のエネルギー消費量は夏より冬のほうが多いため、夏の買い替えが落ち着いた秋口以降にエアコンを買い替えると、設置工事の繁忙期がすぎているので、より丁寧な工事が期待できます。
翌年度の製品が発表されたら、型落ち製品がリーズナブルに購入できるかもしれません。
『APF』について知らない人も多いと思うので、この機会に自宅のエアコンがどの程度の性能なのか把握しておくのもおすすめです。
※写真はイメージ
温度設定やサーキュレーターの活用が省エネにつながる
――そのほかに、エアコンの省エネにつながる使い方を教えてください。
よくあるのが、「30分以内の外出なら、つけっぱなしのほうがいいのか、それとも切っておくのか」という話です。
エアコンがもっとも多く電力を消費するのは、外気温と設定温度の差が大きい運転開始直後。
特に真夏の酷暑では、外気温とエアコンの設定温度との差が大きくなり、運転開始直後の電力消費も多くなってしまいます。
もちろん時間帯やどのくらいの時間出掛けるのかによりますが、ダイキン工業の調査によると、日中は35分まで、夜は18分までの外出なら『つけっぱなし』がおトクです。
出典:夏のエアコンつけっぱなし検証 | 空気のお悩み調査隊がゆく | ダイキン工業
また、エアコンの温度設定もポイントで、冷房を使う場合は設定温度を1℃上げると、年約940円の節約、暖房使用時に1℃下げると年約1,650円の節約につながります。
出典:経産省資源エネルギー庁 省エネポータルサイト
――エアコンの風向きはどうすればいいのでしょうか。
冷気は重いので冷房使用時は水平方向の風向きがよいです。
室内の空気を撹拌(かくはん)するという意味では、サーキュレーターを併用するのもおすすめです。
家具の位置や部屋の構造で置く場所は限られるかもしれませんが、とにかく空気のムラをなくすことができればOKです。
サーキュレーターを使うことでプラスの電気代が気になりますが、仮に最大風量(21Wで試算)の稼働でも、1時間で0.651円、24時間つけっぱなしでも15.6円(『全国家庭電気製品公正取引協議会』が定める電気料金目安単価 31円/kWhで計算)です。
冷房時に体感温度を下げることで、エアコンの設定温度を上げれば節電になります。
さまざまな性能や機能のサーキュレーターが出ているので、値段も踏まえチェックしてみるといいですね。
※写真はイメージ
――冷房と除湿で電気消費は変わるのでしょうか。
ヒートポンプ運転には『冷房』と『暖房』しかありません。室内機と室外機の役割が逆になるだけです。
なので、『冷房』と『除湿』の仕組みは基本的には同じです。室温を下げて結露させて水分を取るのが除湿だからです。
エアコンの『除湿』モードとは、湿度を下げつつも室温を下げないようにする機能。製品によって、弱冷房で室温があまり下がらないようにする『弱冷房除湿』方式と、排熱を再利用して室温を下げないようにする『再熱除湿』方式があります。
『再熱除湿』方式の場合は、『冷房』よりも消費電力量が多くなります。
フィルターも忘れずに掃除しよう!
――エアコンの温度や風向き以外では、どんな点に注意するといいのでしょうか。
エアコンのフィルターは2週間ごとに掃除するようにしましょう。フィルターが目詰まりしていると性能が落ち、消費電力量も多くなります。
例えば2.2kWの性能のエアコンで、目詰まりしている場合と清掃した場合を比べると、年間で990円もの違いがあります。
出典:経産省資源エネルギー庁 省エネポータルサイト
また、室外機カバーも種類やつけ方によっては、逆に電気代が上がることがあります。
例えば、吹き出し口をふさぐようにカバーを取りつけると、うまく空気を排出することができなくなり、冷房・暖房の効果が下がってしまいます。
※写真はイメージ
――エアコン以外の工夫も教えてください。
カーテンで日射を遮ったり、遮熱したりすることで省エネ効果が期待できます。
室内の温度が高くなるのを防ぐことで、室内を効果的に冷やすことができるので、カーテン選びは大切です。もちろんしっかりと閉めましょう。
また、窓からの熱の出入りの影響は、冷房時よりも暖房時のほうが大きく、特に冬は『コールドドラフト』という、床面近くを這うように進む足元の寒さを感じやすくなります。
そのため、カーテンの長さを調整して、下を空けないほうがいいですね。
温度設定やフィルター掃除、サーキュレーターの活用など、まずはできるところから実践してみましょう。
10年以上前のエアコンを使っている場合は『APF』を考慮しつつ、買い換えを検討してもいいですね。
取材協力中村剛
東京電力エナジーパートナー株式会社勤務。2002年に『TVチャンピオン』スーパー家電通選手権で優勝し、銀座にて体験型ショールーム「くらしのラボ」の開設と運営に従事。
現在は、『家電王』として動画マガジン『くらしのラボ』をYouTubeとFacebookで毎週配信しているほか、テレビや雑誌、新聞などのさまざまなメディアで暮らしに役立つ情報発信をしている。無類の猫好き!
[文・構成・取材/大西トタン@dcp]