手に障がいのある女性 食堂で出されたスプーンを見て、胸がいっぱいになったワケ
2020年7月現在、ウェブメディア『grape』では、エッセイコンテスト『grape Award 2020』を開催しています。
『心に響く』と『心に響いた接客』という2つのテーマから作品を募集。
『grape Award 2020』心に響くエッセイを募集!今年は2つのテーマから選べる
今回は、応募作品の中から『銀のスプーン』をご紹介します。
銀のスプーン
私は両腕と指に障がいがある。左腕は欠損していて、右手は指が2本しかない。
学生時代、大学近くにワンコインでランチを提供しているアットホームな食堂があった。
学生の街ではあるが、ランチの価格が高い土地に大学があったこともあり、その食堂は学生たちに重宝されていた。おまけにサラダもスープもついているのだから、体にも優しかった。
マスターは髭を生やしていて、いつもタオルを鉢巻きのように巻いている人だった。決して愛想の良いひとではなかったが、いつもいただくオムライスのランチはとても美味しく、お金のない学生のお腹を満たしてくれていた。私はすぐこの食堂のファンになった。
ある日、いつものようにランチに行くと、銀のスプーンから木製のスプーンに替わっていた。