電車でもめる酔っぱらいと高校男児 乗客が見て見ぬふりをしていると…
2020年8月現在、ウェブメディア『grape』では、エッセイコンテスト『grape Award 2020』を開催しています。
『心に響く』と『心に響いた接客』という2つのテーマから作品を募集。
『grape Award 2020』心に響くエッセイを募集!今年は2つのテーマから選べる
今回は、応募作品の中から『光の国からの使者はいるんだ』をご紹介します。
光の国からの使者はいるんだ
もう30年近く前の、ある爽やかな光景が忘れられない。
その日私は、いつもの3時間残業を1時間で切り上げて会社を出た。ターミナル駅から私鉄に乗り、コンビニで缶ビールでも買って帰ろうなどと思ううち、うとうとし出した。
するとどこか遠くで男の怒鳴り声がする。そう思ったのは私が居眠りをしていたせいで、それは目の前で繰り広げられていた。
「なんや、お前。高校生やろ?」
「だから何なんですか?」
50年配の男と男子高校生がもめている。事情の発端がよくわからず、しばらく聞いていたが、どう見ても高校生が酔っ払いに絡まれているようだ。
ーこんな時間から相当飲んでるな。
席はちらほら空いているが二人はドアの前で立ったままだ。