駄菓子店でお菓子を買えず、落ち込む子供 店主の『行動』に、目頭が熱くなる
2020年5~8月にかけて、ウェブメディア『grape』では、エッセイコンテスト『grape Award 2020』を開催。
『心に響く』と『心に響いた接客』という2つのテーマから作品を募集しました。
『grape Award 2020』心に響くエッセイを募集!今年は2つのテーマから選べる
今回は、応募作品の中から『優しき山バア』をご紹介します。
今から三十年以上前のこと。私が通っていた小学校から、少し坂を下った途中に一軒の駄菓子店があった。無口なお婆さんが一人で切り盛りしている店だった。
「オバちゃん、コレちょうだい」
「…二十円」
小学生相手に、至って愛想は悪く、いつも店の奥に鎮座して、駄菓子の値段だけを呟き続けていた。
動かざること山の如し。
当時、そんな言葉はもちろん知らなかったが、私たちは密かに「山バア」と呼んでいた。
ある日のこと。私は友達四人と、いつものように駄菓子を物色していた。すると、一人の子が、「このガム、お揃いで買おう」と言い出した。
価格、五十円也。他の子が同調する中、私は手の平にある全財産を見つめ、勇気を出して言った。
「三十円しかないねん」