晴れの日も、なぜかビニール傘を持ち歩く親子 その理由は…
「保育園まで近いので、大丈夫です!」の私の声を背に、どんどんその姿は遠ざかっていきました。
私たちの保育園までの距離よりも、お兄さんが歩く駅までの距離のほうが長いのに。それにどうやって傘を返そう。連絡先も聞けなかった…、という現実的な心配と同時に、お兄さんの優しい心遣いに胸が締め付けられて涙があふれてきてしまいました。本当にありがたくて、嬉しくて仕方がなかったのです。
「ありがたいねぇ。これで濡れずに保育園に行けるね。優しいお兄さんがいてくれてよかったね。」
その日から息子にとって“ビニール傘のお兄さん”はヒーローになりました。
お借りした傘を返却したい。次の日も、その次の日も私と息子の登園にはお天気に関係なく、いつも借りたビニール傘が一緒でした。もちろんすがすがしい晴天の日も。
時には登園を渋ってなかなか家を出ようとしない息子を「早くお兄さん探しに行こう!この傘、返せなくなっちゃうよ!」と急かすのにも役立ってくれたこのビニール傘には感謝の気持ちでいっぱいです。毎日キョロキョロと怪しげに首を振っては“ビニール傘のお兄さん”を息子と探しました。でもどうしても再び会えない。
そうこうしているうちに、ついに緊急事態宣言が発令され、4月から息子が通い始めるはずの幼稚園が休園となってしまいました。