【TOKYO MER感想 5話】背を押し、押されるということ・ネタバレあり
では、妹・花子の成功に屈折した思いを抱く軍人の兄を好演している。
感情を殺しストイックさを前面に押し出しつつ、心の奥にある柔らかさを隠しきれない。そういう複雑な役もよく似合う。
音羽が医師と同時に官僚になった動機は、貧しさで適切な医療にアクセスできなかった自分の母親への思いからであった。
しかし、喜多見の妹の涼香に問われても音羽はその動機を明かさない。音羽は命を救った新生児の小さな手のひらに触れながら、その母親に懺悔するように静かな声で語りかける。そして、「新しい命を支援する仕組みを利用してほしい、自分は誰もが希望を持って生きられる国にしていくから」と、付け加える。
そこで気づく。
今回の話は医療従事者へのエールであるのと同じくらい、時に愚かな上からの指示や、矛盾した社会の状況に息苦しく縛られながらも、少しでもベターに制度を変えたいと日々激務をこなしている官僚たちへの熱いエールでもあったということを。
あらゆる危険な現場とタイムリミットに疾走する今作も第5話にして折り返しである。毎回の濃密さに「まだ」と「もう」という思いが交錯する。
この爽快な医療チームがどんな道をいくのか、後半も見守りたい。