【最高の家づくり】vol.6 仕切りがあいまいな家(建築家・中村俊哉さん、藤井 愛さん邸)
お家で過ごす時間が増えた今、わが家がいちばん好きな場所であり、いちばんリラックスできる場所であってほしい。どんな家が自分たちにとって“最高”なのかは人それぞれ。愛する雑貨や植物で彩ったり、インテリアで好きな世界観を表現したり。自分たちで部屋をつくったり、改造したり。そこに住む家族の個性が詰まった、魅力的な10軒のお家をご紹介。さて、わが家はどんな家にしよう? vol.6は、吹き抜けの空間が心地いい、建築家・中村俊哉さん、藤井 愛さん邸をご紹介。
( 中村さん、藤井さん邸 DATA )
FAMILY:4人家族(パパ・ママ・長男4歳・長女0歳)
HOUSE TYPE:一軒家/注文
BUILDING AGE:築5年半
HOUSE SIZE:112㎡/3LDK
AREA:東京都大田区
吹き抜け空間がもたらす
心地いい家族の時間
お互い建築家同士という中村俊哉さんと藤井愛さん夫婦。ダイニングもリビングも2階のワークスペースも、空間を仕切るものが何もないという開放的な住まいは、5年半前に夫婦ふたりで手がけたもの。
「とはいえ、自分たちのために建てた家ではないんです。もともとは夫の友人のために設計した家で、その家族が海外に赴任することになり、私たちが移り住みました」と、愛さん。その施主からのオーダーはというと実はほとんどなく、夫の俊哉さんが相手の好みを熟知していたことから、ほぼお任せ状態でつくることができたそう。
約5mの吹き抜け空間には、中央に階段を走らせ、2階と3階へ一直線に登れる仕様。壁がない分、2階で仕事をしていても下の様子がわかる。また、土間から小上がりに設計されたリビングの壁には一面の大きな窓が。隣にはマンションが建つものの、間に小さな庭を配することで、自然光のなかで緑を楽しめる半屋外的なリビングに仕上がった。他にも、砂入りの漆喰壁、玄関からキッチンに広がる土間、段差のない玄関など、どこかあいまいで完成されていない空気感が、リラックスできる住まいへ導くポイントかもしれない。
約5mの天高に合わせてカーテンをつくったという愛さん。コットンオーガンジーを二重にすることで適度な採光を取り入れつつ、リビングの様子は外から見えないように上手く遮ってくれる。
2階からは1階のリビングの様子が一目瞭然。「生まれたばかりの娘が寝ている姿もすぐ確認できるため、安心して家事や仕事を進められます」
キッチンはダイニングを見渡せるアイランドキッチンに。その上の階には夫婦のデスクスペースを設け、壁の代わりに本棚を配することで、巧みな目隠しになっている。
玄関脇には果実酒の瓶や外出時の小物を並べるシェルフを置き、パーテーションとして活用。壁やドアなどの仕切りをつくらない分、玄関も開放的な空間に。
「2階は将来的に子ども部屋にする計画ですが、現在は夫婦のワークスペースとして活躍しています」。
明るい自然光が常に降り注ぎ、快適な環境のなかで仕事も進む。
屋上ではたくさんの季節の野菜や果物を育て、収穫するのはもっぱら息子くんの役目。すくすく育った野菜をパパに見せては、楽しい家族団らんの時間が続く。
両親に似て絵を描くのが大好きな息子くん。リビングの目立つ場所には大作が飾られ、インテリアとしても大切な存在に。
(PROFILE)
なかむらとしや/東京都生まれ。大学院修了後、芦沢啓治建築設計事務所に勤務したのち、独立。2014年に夫婦で「ship architecture 一級建築事務所」を設立。
http://nf-a.com
ふじいあい/京都府生まれ。大学院修了後、畝森泰行建築設計事務所に勤務したのち、夫婦で建築事務所を設立。住居、店舗、ギャラリーなど、さまざまな物件を手がける。
photography/Aya Sunaharatext/Tokiko Nitta