父・奥田瑛二が女優・安藤サクラを鍛えた「『夕鶴』特訓」
奥田さんは観念し、サクラさんにこう言い渡した。
「わかった。OKを出す。しかし、何も助けてやることはできない。自分で道を切り開く。そこだけは胆に命じて、親を頼らない」
奥田さんはその夜、いろんな思いが錯綜して、眠れなかった。「親の七光り」などと言われるが、七光りで親が面倒を見た子どもが潰れていくのを、奥田さんはその目で何度も見ていた。
「生き残るのは、親が手を出さなかった二世です。
佐藤浩市、中井貴一、緒方直人もそうですね」(奥田さん)
サクラさんは、自分で調べて、ワークショップに通いだし、自分の道を黙々と切り開いていった。
「こっちは人づてに、誰々のワークショップに行っていると聞いて、驚くわけですよ。本気度が増して、本人は命がけだったと思います。親としては、正直、もどかしい。手を差し伸べてやりたい。でも、何もしないで無視する強い気持ちを持たなければいけない。そこから静かなる“せつない親子関係”が生まれてくるわけです」(奥田さん)
当時、サクラさんに対するネガティブな視線が実際にあった。
「『あの顔で女優になるわけ?』とか『親の七光りもどこまで通用するかね』とか。
ずいぶんヒドイことを言われました」