父・奥田瑛二が女優・安藤サクラを鍛えた「『夕鶴』特訓」
(和津さん)
冷たい世間の風のなか、奥田さんにできるのは、自分の作品の現場を見せることだけだった。
そんなころ、奥田さん監督の映画4作目『風の外側』で、主演女優が降板する事態が起きた。クランクインまであと10日。奥田さんは、撮影を延期するつもりだったが、プロデューサーが「サクラさんはどうですか?」と提案してきた。
しかし、すぐには首を縦に振れない。このとき初めて和津さんが口を出した。「サクラを主演にするのは、あなたがしたくないと断固、自分で決めたこと。それはわかる。
でも、今回は、神様のプレゼントだと思って、やったらどうなの?」と。
「それで腑に落ちたんですよ。これは運命的なことだなと思って」(奥田さん)
奥田さんは、1人の監督として、サクラさんに出演を要請。サクラさんはそれを受けた。
「最初の1週間は、現場で怒鳴りまくっていましたね。でも1週間たったら、サクラがスコンと変わって『あ、こいつ化けやがった』と、思った。残りの20日は一切、注文はつけなかった。顔が役の顔になってるし、本名のさくらというひとりの娘ではなく、女優サクラになっているのがプロの目で見えた。
それからは撮影も楽しかったです」