美智子さまの帽子デザイナーが明かす「退位後の新作」
「こんな帽子は、1960年代のジャン・バルテ以来、見たことがない。パリでは、もう、こんな本物の帽子を作れるモディストはいなくなってしまいました」
散歩の途中、ギャラリーのドアを開けて入ってきた老紳士は、興奮気味にそう言うと、展示していた彩り豊かな帽子に目を奪われていた。2016年4月。パリのセーヌ通りにある、「GALERIE DE L’EUROPE」という小さなギャラリーでの出来事だ。
モディストとは、洋服のオートクチュールに匹敵する高級帽子を作るデザイナーのこと。そのギャラリーで個展を開いていたモディストこそが、美智子さまはじめ、皇室の帽子デザイナーでもある石田欧子さん(54)だった。
老紳士が言った“ジャン・バルテ氏”とは、’60年代にフランスのパリで名をはせたモディストだ。
「私の父、平田暁夫は、かつてジャン・バルテ氏に帽子作りを教わりました。
老紳士に、そう話すと、『そうだったのか!本物の帽子を作れる職人が、日本に残っていたなんて』と、とても感激なさって。毎日のように誰かを連れて足を運び、自慢げに私の個展を案内してくださるんです」
欧子さんはそう言うと、静かにほほ笑んだ。