市原悦子さん友人・大方斐紗子が見た「えっちゃんの夫婦愛」
大女優への道を邁進する市原さんのそばにいたのが、塩見さんだ。
「塩見さんはえっちゃんの同期で、当時、俳優座のスタッフでしたが、イメージでいうと“ボロボロのジーンズに上着を着ている人”(笑)。いつも仲よくしていて、その気取らない人格に引かれたのでしょう、’61年に2人は結婚しました」
市原さんは著書『白髪のうた』(春秋社)のなかで、同期から夫婦へと信頼を深めていく2人の様子を、こう振り返っている。
《役者と演出部のつながりが、じわじわでてきたわね。向こうは見守る、こっちは一生懸命やる……舞台に立つ者と裏を支える者の関係なの。守られているって感じかしら。あの安心感はだんだん積み重なっていったわね……》(以下《》のなかは同書より引用)
また、市原さんは27歳のときと、35歳のとき、妊娠はしたが2度とも流産するというつらい経験をしている。
《何回か一人で泣いた夜に、塩見に「昔だったら、もう完全に離縁ね」くらいのことは言ったかな》
すると塩見さんは、「子どものいない人生だってあるよ」とボソッと言い、市原さんは、それにものすごく救われたのだという。
そうして塩見さんは、女優業に精進する妻を見守ってきた。