「葬式はしないでほしい」吉沢久子さん、101歳大往生の作法
人の嫌な面を見てしまうと、『いやだな、つきあいたくないな』と思いがちですが、先生は『その人のいいところも見てあげなさい。どんな人にも、いいところはあるのよ』とおっしゃっていました」
1918年、大正7年生まれの吉沢さんは、16歳で新聞社に入社後、速記者を経て、高名な文芸評論家の古谷綱武さんの秘書となり、後に結婚した。ご主人の仕事上の「来客」にも、高価な食材ばかりの豪華料理ではなく、そのときどきで手に入る食材を工夫して調理したという。また、青木さんによれば。
「お手紙や贈り物も、どなたから届いたものかすぐにわかっていました。そのうえで富や地位で区別することなく、すべて丁寧に扱っていた。どんな方にも、分け隔てがなかったんです」
人の嫌な面に気づいても、「いいところ」に目を向けてみる。相手の地位や自分への利益だけで人を判断せず、誰にでも平等に、分け隔てなく接する。
そんな振舞いが、人と人とのつきあいを円滑にした。人間関係を円滑にするために、吉沢さんが徹していたことがほかにもある。「『周りに迷惑をかけない』ということを心がけていました。葬儀や告別式を行わなかったのもその一環だったと思います。