2019年4月25日 06:00
林眞須美死刑囚の長男「母を見殺しにして幸せになれるか」
なぜ、話したの」と激しく彼を責めた。
信一さんは、決して衝動的な行動ではなかったと、2年前の決断をふり返る。
「事件から逃げることは可能だと思った。でも、そうすれば、母親がやったんだと、僕自身が認めたことにもつながる。和歌山を離れ、彼女と結婚して、新たな生活を始める。それが、母を見殺しにするような気もして」
家族は、今も母親の無実を信じている。しかし、最高裁判決が出た直後、長女は父親の健治さんにこう漏らした。
「泥船に乗った林家の6人のうち、1人を船に残せば、あとの5人は助けてやると言われたような気分」
泥船に残す1人とは、もちろん林死刑囚を指す。
昨年の面会時、信一さんに、その母が言った。
「事件から離れて、自由に生きなさい」
信一さんは答えた。
「離れて自由にと言うけれど、そう簡単にはいかないんだよ」
姉や妹にも、母は同じ言葉を伝えていた。姉は長男に言った。
「お前も気をつけなさい。深入りすると、人生が台無しになるよ」
信一さんは、自問自答する。事件から離れ、違う世界で別人として生きて、本当に幸せなのか。
「ずっと考えてきたけれど、答えが出せない」
だから、息子として、どうしても母に確かめたかったのだ。