元ジブリアニメーターの女性が『なつぞら』に抜擢された意味
舘野さん自身、宮崎駿監督率いる「スタジオジブリ」で27年間働いた、ベテランアニメーターだ。
ジブリを退職した年に、貯金と退職金を注ぎ込んでオープンしたこのカフェを、訪ねて来たのがNHKの制作統括・磯智明さんだった。’17年10月のことだと磯さんは振り返る。
「アニメの歴史に沿ったさまざまなタイプのアニメーションを、柔軟に作り分けられる人がいないと、このドラマは成立しません。ところが、大手の制作会社を当たってみると、どこも2〜3年先まで予定が埋まっていたんです」
そこで、舘野さんの著書『エンピツ戦記誰も知らなかったスタジオジブリ』(中央公論新社)を読んでいた磯さんは、舘野さんに白羽の矢を立てたのだ。
「舘野さんなら、日本のアニメ制作の歴史を肌で知っている。アニメ業界にも顔もきく。『うん』と、引き受けてもらうまでは帰らないという決意でした」
『なつぞら』には、日本アニメ界の伝説のアニメーターを思わせる人物が何人も登場する。
なつの才能をいち早く見抜いた仲努役の井浦新さんはこう話す。
「舘野さんからは、仲のキャラクターの参考となった森康二さん(アニメの神さまと呼ばれ、『白蛇伝』の作者)