元ジブリアニメーターの女性が『なつぞら』に抜擢された意味
刈谷さんの仕事を見て、舘野さんは思う。
「とても素敵な絵コンテや原画を描いてきてくれて。手だれの完璧さはないけれど、とても若々しい。その危うさも魅力です。ジブリのころは、完璧さを求めてキリキリしたけれど、いまでは細かいところにこだわりすぎない豊かさを、私が逆に気づかされました。完成品はとても心ひかれるものになりました」
舘野さんは、アニメーター役の俳優たちの技術指導も担当した。鉛筆の持ち方、線の引き方、紙を指でパラパラとめくって、動画の動きを確認する練習もした。
「広瀬さん(なつ役)は集中力のある方で、仕事が丁寧で線がきれいでした。
線には人が出るんです」
磯さんは言う。
「宮崎駿さんのような天才アニメーターを頂点に、1つのチームでアニメーションを作るやり方もあります。でも、個性的なアニメーターが集まって、それぞれの適材適所を見極め、面白いものを作っていくやり方もあると思います。そういう新しい可能性を舘野さんが中心となって切り拓いてくれたら、日本アニメの未来は、もっと素敵なものになると思います」
周囲の期待は大きいが、舘野さんは謙虚だ。
「もしかしたら、『なつぞら』は今までの苦労に対する私へのご褒美なのかな。