辻仁成流・恋愛の鉄則「新しい恋は焦らずに」(JINSEIのスパイス!第53回)
【今週の悩めるマダム】
離婚して3年。再婚したくて焦っています。一応、付き合って半年の彼氏がいます。ただ、ひとつ心配なことがあって……。ふだんは紳士的でつねにレディーファースト。周囲も「いい彼だね」と褒めてくれます。でも、ふとした瞬間に粗暴な性格が表れます。暴力はないですが、キレやすいのか、目が怖いときがあります。
(東京都在住・40代女性)
どういう粗暴さが垣間見えるのか僕にはわかりませんが、再婚に焦ってばかりいては「あばたもえくぼ」に見えがち。よく注意して、もう少しお付き合いしてから判断されてはどうでしょう?それがメッキの優しさなら1年以内に剥がれます。あと半年くらい様子を見てからでも、遅くはないと思いますよ。ちょうど最近、僕のフランス人の女友達があなたと似たような経験をしているので、参考にしてみてください。
ステファニーは42歳の銀行員で、小さな支店の副支店長。キャリアもあり、しかもヴァネッサ・パラディ似の美人なんです。でも、これまで仕事一筋で来たので婚期が遅れてしまい、長年付き合った彼とは数年前に自然消滅してしまいました。それから月日が流れ、今年に入って、少し年上の素敵な彼氏ができたのです。
彼女が彼との結婚を決意したのは南仏のホテルのビーチでのこと。初めての夜を迎えようとしていた夕刻のアペリティフの時間。浜辺のテラス席にある4人掛けのテーブルに座ったのですが、彼はそのままトイレへ。するとステファニーの横の席に1人の老女がやってきました。ちょっと見た感じはホームレスっぽかったとステファニーは回想します。「座ってもいいかい、満席だから」と老女は言いました。「私たちは2人だから」と、ステファニーはその席に置いてあった荷物を移動させて譲りました。彼が戻ってきて、その老女に「よければぼくの隣にどうぞ。
そこは眩しいでしょ」と声をかけたのだとか。何事も快く引き受ける優しさがこの人にはある、とステファニーは思ったといいます。そして、老女が隣に移って座ると、彼は自分の椅子をその老女に近づけ、自分の母親にするように愛情豊かに語りかけました。その上、なんとギャルソンにシャンパンを3杯注文したのです。老女はびっくりし、その男性をじっと見ていました。ステファニーはその夜、彼に身体を許し、結婚を意識するように。「こんなに優しいジェントルマンなら絶対大丈夫」と思ったのだそうです。その半年後、2人は見事にゴールイン。
ところが、この男性は結婚した途端、豹変します。粗暴さが目立つようになりました。ステファニーには一人暮らしのお母さんがいましたが、結婚式の後は会おうともしません。出会ったころは不動産会社に勤務していたようですが、そこをやめ、今はもう働いていないのだとか。この間、ステファニーは電話で、「騙された……」とこぼしていました。あの南仏の老女へ向けた優しさはステファニーの心をとらえるための作戦だったのかもしれません。ステファニーはその時、この見知らぬ老女にここまで優しくする男性ならば、自分の母親にもそれ以上に優しくするだろうと思ったのでしょう。
ともかく、恋は焦らずに。
【JINSEIの格言】
再婚に焦ってばかりいては「あばたもえくぼ」に見えがち。よく注意して、もう少しお付き合いしてから判断されてはどうでしょう?それがメッキの優しさなら1年以内に剥がれます。
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