STAP騒動が逆風に…“iPS細胞で網膜再生”偉業にあった危機
兵庫県の「神戸アイセンター」内の神戸アイセンター病院で患者と向き合うのは、眼科医の高橋政代さん(58)だ。
17年にオープンした同センターでは、治療はもちろんだが、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使った網膜再生医療の研究や視覚障害者のリハビリなども実施。最先端の治療を求め、全国から多くの患者が集まるのだ。
しかし、高橋さんが白衣姿でこの診察室にいるのは週に1度の月曜午後だけ。というのも、彼女にはトップ研究者としての顔もあるからだ。
14年9月、目の難病患者にiPS細胞を使った網膜移植が行われ、成功した。この世界初のプロジェクトを率いたリーダーが、当時、理研(理化学研究所)にいた高橋さんだ。
「第一歩を踏み出すことができました。
視覚障害の方が、少しでも暮らしやすくなれば」そう記者会見で語った高橋さんに、iPS細胞を開発した山中伸弥さん(57)も「高橋さんの世界初の移植手術により、ニッポンがiPS細胞の実用化を前進させている」と、エールを送った。
そんな高橋さんが世界的快挙に到達するまでの道は、平坦なものではなかった。
彼女の耳に、山中教授がiPS細胞の開発に成功したという報せが入ったのは理研に来てから約1年後の07年の秋。