大川小で妹を失い…震災と向き合うため映像の世界に飛び込んだ
かねて志望していた日大藝術学部映画学科に見事合格した。
「いつかは石巻を舞台に『命のぬくもり』を伝える映画を撮りたい」と勉強するなかで震災関連の文献も読み込んだ。そして親に抱いていた「なぜ先生を責めるの?」という疑問にも一定の答えが出た。
「子どもを失った親の『わが子がどうして命を落としたのか、その真実を知りたい』という切実な気持ちが理解できるようになったんです。それを踏まえて、震災に向き合う卒業制作に取り組めるようになりました」
それは、震災で家族を失った登場人物に「亡くなった人に向けて手紙を書いてもらう」過程を撮った30分のドキュメンタリー。自身も「語り」を兼ねて登場し、妹への手紙を朗読した。
「妹への思いを言葉として口に出したのは初めてです。《みずほは21の年だろうか。
みずほはみずほで、そちらで元気で過ごしているだろうから大丈夫だよね……》というように」
「頭の中の別世界」で妹を生かそうとしていたそのみさんが、卒業制作では「亡くなった人への気持ちを純粋に込めよう」と思えた。妹の死に正面から向き合えるようになったのだ。
「これまで、《震災以外のテーマには目を向ける時間はない》と遮断していたんです。