2020年6月10日 06:00
コロナ集団感染乗り越えた老人ホーム明かす「1人で30人をケア」
飲食業や観光業の窮状、あるいは医療関係者の奮闘はあらゆる媒体で日夜報じられているが、それに比して、見落とされがちなのが介護事業者だ。いま、現場は非常に厳しい闘いを強いられている。
「おそらく4月初旬の入所者が感染されていたのだと思います。4月22日ごろから10人の入所者が発熱し、PCR検査をしたところ、9人が陽性反応。残念ながら、最初に感染した入居者は亡くなってしまいました」
そう話すのは、特別養護老人ホーム「北砂ホーム」(東京都)の回診担当医をつとめる「あそか病院」の白石廣照さんだ。
北砂ホームの対応は早かった。提携する医療法人の協力を得て、4月27日には、残り入居者と職員にPCR検査を実施する。入居者81人中21人、職員18人中6人が陽性という結果。
クラスターが発生したことが判明する。
「しかし、保健所に相談しても、『受け入れ先の病院がない』という回答でした。感染症指定病院ではないうちの病院で、症状が重い患者を受け入れるしかありませんでした」
職員から感染者が出た北砂ホームは、介護崩壊の危機に陥った。
「陰性だった職員も、念のために2週間の出勤停止にする必要がある。入居者をケアするスタッフがいなくなってしまったんです」