小山明子が振り返る夫・大島渚監督の介護、自身も重度のうつに
長年連れ添い、紆余曲折を経ながら、最後は「夫を介護する」という試練と向き合うことになった妻たち。そのとき、夫に何を思うのか。きれいごとだけでは片づけられない複雑な思いを超え、見えてきた「夫婦って何?」の答えに、耳を傾けましたーー。
■小山明子さん(85・女優)/夫は故・大島渚(享年80)
「ロンドンで倒れて帰国した夫の大島には、右半身のマヒが残りました。彼を支えるといっても、私は女優で何もできないのがつらくて」
国際的に活躍していた映画監督の大島渚さん(当時63歳)が、滞在先のイギリスで脳出血により倒れたのは’96年2月。妻の小山明子さんには、その日から介護生活の重圧がのしかかる。
「息子2人もいましたが、ずっと家事はお手伝いさん任せでしたから、カロリー計算などしたこともない。周囲の励ましの声が、逆に『お前は妻失格だ』と聞こえ、私は最低な女だと、自分で自分を追い込んでいったんです」
ついには自殺願望も出現し、自身も閉鎖病棟へ入院となる。
診断は、重度のうつ病だった。
ある日、夫に付き添い、リハビリ室で待機していると、隣にいた年配の女性が話しかけてきた。
「奥さん。あの方、有名な映画監督の大島渚よ。