映画デビュー60年の岩下志麻「老いは怖くない、いつも自然体」
「『いけいけ、もっとやれ!ああ、もう、何やってんのよぉ~~』。プロ野球中継がある日は、こんなふうに一喜一憂しながら、リビングで1人大声を張り上げています。気づいたら、ソファからも立ち上がってたり。野村監督(克也・享年84)がチーム再生に乗り出したころからのタイガースファン。特にいまはコロナでいろんなことが自粛になっているから、野球観戦が唯一といってもいい楽しみですね。ときどき篠田がやってきて、『ほら、三振するぞ~』なんて、わざと言うんです(笑)」
今年、映画デビュー60周年を迎えた女優の岩下志麻さん(79)。くしくも、その作品『乾いた湖』を監督し、やがて夫となるのが、いまも会話に登場した篠田正浩さん(89)だ。お2人は結婚以来、自立した夫婦の先駆けとして、互いを「戦友」と「同志」と呼び合いながら第一線で活動してきた。
120本以上もの映画に出演し、その大半で主役を演じた岩下さんだが、最も多いのが夫である篠田監督とのコンビだ。
そんな岩下さん。実は、学生時代は女優を目指していたわけではないと話す。
「銀座生まれの吉祥寺育ち。父も母も、ともに新劇の俳優でした。3歳のとき、はしかと肺炎を併発して、生死の境をさまよう大病をしました。