岩下志麻の“母の顔”「撮影後は娘を抱きしめ“愛してる”と」
だから、抱っこもできない。すごく切なかったですね」
「『お嬢さんがかわいそうだから、仕事をやめてください』。あるとき、娘のお世話をお願いしていた方から言われて、私も本当に涙が出ました。女優をこのまま続けていいのかと罪の意識にさいなまれ、鬱っぽくなりました。
また、うちの娘は“後追い”しなかったんです。もう、この人は仕事に行くものと、あの幼さで気持ちを抑えている。それが余計にいじらしくてね。しかし、そんなとき、篠田は言いました。
『おまえさんから女優を取ったら、何もないよ。やめちゃいけない。女優をしているときが、いちばん輝いているんだら』」
励まし続けてくれた篠田監督との77年の『はなれ瞽女おりん』で、第1回日本アカデミー賞主演女優賞を受賞。岩下さんは「これで吹っ切れました」と話す。
一方、実生活では娘さんが小学校入学という時期を迎えると、運動会や入学式などの学校行事にはすべて出席。撮影現場から家庭に戻ると、「愛してる、愛してる」とわが子を抱きしめたという。「帰宅して娘にワーッと抱きつくと、すべての疲れが取れました。私は本気で『愛してる』だったんだけど、そのうち小学校の高学年になると、娘のほうが『気持ち悪いからやめて』で、いつの間にかやめましたが(笑)。