中村獅童語る芸能のありかた「夢求める時代は終わったが…」
「これだけ時代劇がなくなっていくなかで、料理や衣装にこだわり抜いた大作ができたことが、歌舞伎という時代劇の世界で生きる役者として純粋にうれしいんです」
歌舞伎界のみならず、俳優としても活躍する中村獅童(48)。最新作はシリーズ累計発行部数400万部を超える時代小説が原作の映画『みをつくし料理帖』(10月16日公開)だ。女料理人・澪と幼なじみの野江の数奇な運命を、まごころあふれる料理を通して描く本作で、獅童が演じるのは遊郭の料理番・又次。原作でも人気の高いキャラクターだ。
「又次は寡黙だけど、誠実で優しくて強さもある。いわゆる昔の日本のいい男。台本に書かれていない行間を埋めるのが大事ではないかと、立ち姿や言動から生きざまが匂い立つような男を意識しました。歌舞伎もそうですが、形だけやっても嘘になる。
気持ちがあって初めて美しいものになるんです」
澪と野江を演じた、松本穂香(23)と奈緒(25)と共演した印象を聞くと……。
「撮影中に私語を交わした記憶がなくて。それぐらい、2人ともその役にしか見えなかったし、一緒にやっていると自然とその世界観に入れるんです。この前、テレビで着物姿じゃない奈緒ちゃんを見て、『あー、こういう人なんだ』と初めて知りました(笑)」