くらし情報『震災の痛みに寄り添う食 料理家・枝元なほみが考える“食べる力”』

震災の痛みに寄り添う食 料理家・枝元なほみが考える“食べる力”

こうして連載を持つことになり、現在も「ホームレス人生相談・世界一あたたかい人生レシピ」は継続中。08年には、農業を応援する「チームむかご」を発足させた。

「料理に携わり、日本全国の産地を訪ねるなかで、このままいくと日本の農業はヤバイと危機感を抱いたからです。山いもの球芽であるむかごはおいしいのに、収穫する手間が面倒だから、ほとんど山に捨てられていました。でも、食物繊維も多いし、重労働は難しいおばあちゃんでもラクに採ることができる。単純にもったいないじゃない、と思って収穫と販売を始めて」

その後、東日本大震災では「にこまるプロジェクト」を立ち上げ、被災地で焼いたクッキーをネット販売して地元に還元するなどの活動も先頭に立ってやってきた。

「避難所で、みんなでクッキーを作っていると、『あの人も亡くなっちゃったね』などという話にもなる。そこへクッキーの焼ける甘い匂いがしてきた途端、みんなの表情が少し和らいで、震災以来初めてという笑顔も出たり。
実感するんです。ああ、食べることの力って、これなんだ。食べることは、生きることだって」

生きる力を作る料理の道。枝元さんのあゆみは続いていく。

(撮影:田山達之)

「女性自身」2021年2月23日号 掲載

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