「百恵は泣いていた」小柳ルミ子語る引退コンサートの裏側
〈みなさん、どうもありがとうございます。みなさん、本当にどうもありがとう。私が選んだ結論、とてもわがままな生き方だと思いながら、押し通してしまいます。8年間、一緒に歩いてきたみなさんが『幸せに』って、そう言ってくれる言葉がいちばんうれしくて。
みなさんの心を裏切らないように精いっぱいさりげなく生きていきたいと思います。いま、みなさんに『ありがとう』っていう言葉をどれだけ重ねても、私の気持ちには追いつけないと思います。本当に、私のわがままを許してくれて、ありがとう。幸せになります〉
80年10月5日に行われた「山口百恵ファイナルコンサート」で、ラストソングとなった『さよならの向う側』の前に百恵さんが語った全文だ。
ときに涙も交えての感動的なトークだったが、実はすべて“アドリブ”だった。コンサートの構成を担当した演出家の宮下康仁さん(70)は、それを手に懐かしげに当時をふり返る。
「台本作りでは百恵さんと何度も打ち合わせしましたが、あの箇所には、“最後の語りを”とあるだけ。実際のところ、当日はコンサートもクライマックスを迎えるなか、込み上げてきた自分の思いを、そのまましゃべったんだと思います」