2021年3月29日 11:00
「ダウン症の兄に守られていた」元ヤングケアラー語る過去
ダウン症の兄ター君(中央)と夫、マー君は持田さんの最強の味方「でも私は兄にとって口うるさい母親的存在のようです(笑)」
ヤングケアラー、それは無償で家族の世話や介護をする18歳未満の子供たちのことをいう。
「父は通信社のカメラマンで国内外での仕事も忙しく、家庭での子供の世話は、ほとんど母が一人で担っていました」
こう語るのは持田恭子さん(54)。持田さんもまた、親とダウン症の兄の世話を体験した“元ヤングケアラー”だ。
「小学生のころから父がアルコール依存症になり、母や私に暴力をふるうようになっていました。父自身、兄のター君をかわいがりながら、一方でター君の通院のせいで出世につながる転勤をできないなど、ストレスを抱えていたのだと思います」
父親の変貌ぶりに、今度は母親までうつ病を患い、毎日「死にたい」と口にするように。
「当時、父や母自身が、社会から取り残された、いわば被害者でした。でも10代の私には、そこまで理解できなかった」
25歳の時、転機が訪れる。イギリスの金融情報サービス企業への就職だった。
しかし母は、渡英しようとする持田さんに詰め寄り、言った。
「もし私たちを捨ててイギリスに行くなら親子の縁を切る。