2021年4月6日 17:00
「帰る家があること」がたどり着いた小さな幸せ(JINSEIのスパイス!最終回)
【今週の悩めるマダム】
1歳の息子と夫の3人家族です。夫は優しくて子どももとってもかわいいのですが、コロナもあって楽しいと思えることがなく、家事と仕事に追われて過ぎていく日々に疲れました。幸せが何か、わからなくなりつつあります。辻さんは幸せってなんだと思いますか?そしていま、幸せですか?(東京都在住・40代主婦)
僕は毎日、17歳の息子に食事を作っています。毎回おいしいと言ってくれるわけではありませんが、「この子におなかいっぱい食べさせてあげたい」と思うとき、なぜかわからないけど、ささやかな幸せを感じるんです。
若いころの僕は野心の塊でした。自分が設定した目標に到達することだけを、人生の醍醐味と考えて生きていたように思います。いまでは、お金は必要な分だけあれば十分だと思っています。
負け惜しみじゃないけれど、丁寧に出汁をとったみそ汁の染み入る旨さは、高級レストランの料理とはまったく異なる満足感を与えてくれます。人生を振り返ることのできる味わいに、ときどき、どうしようもないくらいの幸せを覚えることができるようになりました。いつか息子は巣立っていくわけですけど、その後、僕は一人になっても、きっと丁寧に出汁をとり続けるような気がします。