80年代、どの層が吉本ばなな『キッチン』を好んだのか
単行本発売の翌年に早くも映画化された『キッチン』(写真:共同通信)
住んでいた場所は違っても、年齢が近ければ「そうそう!わかる」って盛り上がれるのが、青春時代にみんながこぞって読んでいた本の話。同世代の女性と一緒に、“あのころ”を振り返ってみましょうーー。
’88年に出版された吉本ばななのデビュー作『キッチン』。’89年にすぐさま映画化(監督・森田芳光、主演・川原亜矢子)され、’89年3月に発売された『TUGUMI(つぐみ)』は、平成初のミリオンセラーを記録した。
吉本ばななは’80年代の終わりに、文学界を彩った作家といえる。
トレンド評論家の牛窪恵さん(53)は『キッチン』の《私がこの世でいちばん好きな場所は台所だと思う》という始まりの一文が印象的だったという。
「昭和の働く女性は、職場ではお茶くみ、飲み会ではお酌をするのが当たり前とされていました。バブル期に入り、そうした風潮への抵抗感もあって、多くの女性は肩パットに象徴される「肩肘張ったキャリアウーマン」に憧れました。
ですがバブル終焉まで、社会は女性解放とはほど遠く、そうした女性が「オヤジギャル」と揶揄されることもあったほどです。