交換時の不注意や、誤った保管で「乾電池から発火」にご用心
乾電池がテレビのリモコン内で発熱のトラブル例も(写真:アフロ)
長引くコロナ禍で在宅時間が増えるなか、久しぶりに自宅の押入れやクローゼットの片づけをして、電池が大量に出てきたという人もいるだろう。
「まとめておくのは危険です。古くなった電池にも電圧が残っている場合があるため、電池同士が触れ合ってショートし、発火する恐れがあります」
そう警鐘を鳴らすのは、東京消防庁予防部調査課課長補佐の小清水雄二さんだ。
’20年8月に福岡市で発生した、住宅兼事務所が全焼するという火災の原因が“乾電池”だったことが先日明らかにされた。福岡市消防局の火災調査報告書によれば、1年以上前からコンテナボックスで保管されていた角形電池のプラス端子とマイナス端子にボタン電池などが接触し、ショートしたことで発火したと推定されている。
「箱や袋にまとめて入れていた角形電池とボタン電池が触れたことで発火したと考えられる事例は都内でもあります。消火器が必要となるケースもあり、放っておいたら全焼にまでつながる可能性も十分ありますから、注意が必要です」(小清水さん・以下同)
このように、誤った電池の使用方法や保管の仕方が原因となって発熱・発火が起こった例は複数ある。予防のためには、廃棄する電池は絶縁テープ(ビニールテープ)で包み、ほかの電池や金属類と一緒に保管するのは避けることを徹底しよう。
■電池交換時の不注意が発熱につながることも
家庭内で起こる発熱・発火のリスクはリビングにも。東京都生活文化局には次のような事例が報告されている。
《テレビのリモコンに乾電池をプラス極側から入れたところ、電池ケースのばねでマイナス極側の絶縁フィルムを傷つけてしまい、3日後に発熱し、プラスチック部分が溶けた。知らないで触った子どもがやけどした》
ちょっとした不注意が招くリモコンの発熱に関して、小清水さんは次のように警告する。
「電池のマイナス極付近のフィルムが傷ついて、むき出しになった部分はプラス極なのです。そこに電池ケースのばねが触れることでショートしてしまい、電池が熱くなって、まわりの樹脂が溶けたりすることも。電極のまわりの包装を傷つけないように気をつけることも大切です」
■ 家庭用電池のタイプ別「火災の原因となりうるケースと注意点」
【角形乾電池(マンガン・アルカリ)】
〈発熱や発火を招く例〉:複数の角形電池をボタン電池と同じ容器で保管していて、その容器を動かしたときに角形電池の端子部分にボタン電池が接触して、回路ができ、ショートする。
〈対策・注意点〉:ほかの電池と一緒に保管しない。
【筒形乾電池(マンガン・アルカリ)】
〈発熱や発火を招く例〉:テレビのリモコンの電池交換時、電池ケースのマイナス極側のばねで絶縁リングのフィルムを傷つけてしまう。その箇所にばねが触れて回路ができ、ショートする。
〈対策・注意点〉:電池を入れるときに、覆っているフィルムを傷つけない。
【ボタン電池】
〈発熱や発火を招く例〉:買い置きのボタン電池の包装を外し、複数の電池をひとつのビニール袋に入れていて、袋を動かしたときに電池が触れ合って回路ができ、ショートする。
〈対策・注意点〉:包装をはがした状態でまとめて保管しない。
【リチウム乾電池】
〈発熱や発火を招く例〉:カメラやLED懐中電灯などに複数本の電池を使用するときに、1本だけ電池ケースの正しい向きと反対方向に入れてしまい、回路ができて破裂を起こす。
〈対策・注意点〉:正しい向きで使用する。金属類と一緒に保管しない。
【リチウムイオン電池】
〈発熱や発火を招く例〉:スマートフォンや携帯扇風機、モバイルバッテリーなどに転倒や落下による衝撃が加わった際、内蔵のリチウムイオン電池が損傷し、発熱・発火する。
〈対策・注意点〉:外的な衝撃を与えない。フル充電できないもの、膨らんできたものは使用を避ける。
そして、共通する注意点は、使用する際にプラス極・マイナス極を入念に確認する。開封済み、使用済みの電池には絶縁テープを貼る。廃棄前に別の電池や金属製のものと一緒に保管しないことである。
私たちの生活に身近な電池も、取り扱い方次第では深刻な火災を招く危険がある。
正しい使用・保管を心がけ、思わぬトラブルを招いてしまうことのないよう十分にご注意を!