2021年10月11日 11:00
パラ開会式で国歌 佐藤ひらり「夢を叶えるには言い続けること」
母から被災地を応援するための曲作りを提案されて小学4年から作曲をはじめたひらりさん
伸びやかで、透明感のある歌声が、夜空に染み入るように、神宮の杜に響き渡っていた。
8月24日、東京・国立競技場で執り行われた東京パラリンピック開会式。式序盤、日本国旗の掲揚とともに行われた国歌独唱。その大役を務めたのが、武蔵野音大2年で、生まれつき全盲のシンガー・ソングライター、佐藤ひらりさん(20)。淡いピンク色のドレスに身を包み、両手でマイクを握りしめ、真っすぐ前を向いて歌い上げた。
「珍しく、すっごく緊張しました。国旗を運ぶ自衛隊の人たちの『イチ、ニー、イチ、ニー』っていう号令の声が遠くからだんだん聞こえてきて。それが、よけいに緊張感を増幅するんですよー」
大舞台に立った感想を尋ねると、ひらりさんはこう言って、あどけなさの残る顔に、無邪気な笑みを浮かべてみせた。
まだ二十歳。だが、聴衆を前にして歌うキャリアは、すでに15年に及ぶ。小学4年生のときには、自らが作詞作曲した曲のCDもリリースした。
早熟な彼女の活動を支え続けているのが、母・絵美さん(47)だ。わが子の目に重い障害があると医師から告げられた絵美さんは、生まれて間もないひらりさんに向かって、こう語りかけた。