「収入が少ないから貯められない」は言い訳 改めたい貯蓄の考え方
「『貯蓄できないのは、収入が少ないからだ』という人がいますが、それはただの言い訳です。貯蓄をするのに、収入の多い、少ないは関係ありません」
そう語るのはマネーコンサルタントの頼藤太希さん。人は時間やお金を、あればあるだけ使ってしまう−−これを「パーキンソンの法則」という。収入が多くてもあるだけ使ってしまえば貯蓄できないが、いっぽうで、収入が少なくてもうまくやりくりし、貯蓄を増やす人もいる。
貯蓄とは、自分の収入を少し取り分けて、それを積み上げていくこと。そのための適切な方法をとれば、どんな額の収入の人でもお金を貯められるという。
「貯蓄のために、まず大切なのは自分の収入に応じた予算決めです。たとえば遊興費。
際限なく使っていたらお金は貯まりませんが、ゼロにするのは苦しいでしょう。だから、予算を決めるのです。予算とはその範囲内なら自由に使ってよいもの。ですから予算を守っていれば、買い物のたびに『買ってもいいのか』と悩んだり、買ってから『使いすぎてしまった』と後悔したりすることもありません。節約というプレッシャーからも解放されますよ」(頼藤さん・以下同)
支出はともかく、貯蓄も予算化するのだろうか。
「もちろんです。貯蓄は収入の2割を目標にしてください」
貯蓄は世帯単位で考える家庭が多いが、妻自身の収入からも2割貯蓄を目指すとよいという。
「たとえばおもな稼ぎ手が夫で、その収入に余裕があれば、妻の収入は全額貯蓄することもできるでしょう。
いっぽう、妻の収入から食費や子どもの教育費など家計を補てんしている場合には、それはちょっと難しい。ですが、それでも貯蓄なんて無理だとあきらめるのではなく、できる範囲で貯蓄の予算を決めることが、お金を貯めるためのはじめの一歩なのです」
■「節約」と「運用」で100万円の貯蓄を目指そう
貯蓄のために節約は欠かせないが、お金を貯めるには、ほかにどんな手段があるのだろうか。
「お金を貯めるというのは、言い換えれば、お金を増やすということ。その手段は、『節約する』『収入を増やす』『運用でお金に働いてもらう』の3つです。収入を増やすのは簡単ではないので、現実的には節約と運用でしょうか。ただ節約も運用も手あたり次第に取り組めばよいというものではなく、収入の多寡によって取り入れるべき“正解”があります。そのことを理解したうえで、まずは100万円を目標にお金を貯めていきましょう」
収入によって1年で貯まる人もいれば5年がかりになる人もいるが、100万円というのはけっして手の届かない金額ではない。
まずは貯蓄の目標として、100万円という明確な金額を設定し、予算決めをすることが、お金を貯めるためのモチベーションの維持にもつながるのだ。
■無駄な出費を抑えるには“主婦の目線”が有効
それではここから、お金を貯めるための“正解”を頼藤さんに細かく教えてもらおう。
「まずは収入の多寡にかかわらず言えることですが、入ってきたお金を使い『残ったら貯蓄する』では、貯蓄は進みません。冒頭にあったパーキンソンの法則のとおり、人間というのは、お金があったらあっただけ使ってしまうもの。ですから、貯蓄は給料日の直後に別口座に移すなど『先取り貯蓄』が鉄則です。先取りした貯蓄は“なかったもの”として、貯蓄後に残ったお金が使える限度額。逆に言えば、この範囲なら使い切っても大丈夫です」
先に貯蓄を済ませているから、もう残さなくてよい。そう考えると、意外と気楽かも。ただ、節約を心掛けているつもりでも、「いつの間にかお金が減っている」ということがある。
「その原因は『ラテマネー』かもしれません。これは、カフェ代やコンビニコーヒーのような小さな支出のことで、積み重なると大きな出費になります。金額が小さいので意識から抜け落ちがちですが、使途不明金として家計を圧迫する原因になることも。こうした出費を抑えるのは、日ごろの買い物を担当していることが多い、女性の腕の見せどころかもしれません」
また、スーパーなどでは10円、20円の価格差に敏感なのに、デパートや行楽地などでは金銭感覚が狂ってしまうことも。
「デパートや旅先などでは、せっかく来たのだから、と余計な買い物をしがちです。いつもの家計とは別の財布から払う感覚になるのでしょうが、実際は同じ財布からの出費です。こうした『せっかく買い』をコントロールするにも、やはり日ごろの家計をあずかる主婦の目線が有効だと思います」
年収1,000万円以上でも貯蓄ゼロの世帯が約10%あるという(’20年・金融広報中央委員会)。「貯蓄に収入は関係ない」。
頼藤さんのこの言葉をもう一度心に刻み、来年こそ「100万円貯める」ための第一歩を踏み出そう!