老後資金に不安がある人必見!春の年金大改正で得するための3カ条
老後の暮らしを支えてくれるものといえば「年金」だが、その年金の仕組みが’22年春から大きく変わる。少しでも多くもらい、取りこぼしを極力なくすためにも、今からキッチリ予習しておこうーー!
’22年4月に制度の一部が変わる年金。高齢化真っただ中での今回の“年金大改正”は、長生きを前提に、年金をできるだけたくさん増やせるようにするというもの。
「人生100年時代を迎えて、夫の定年退職時が“人生の折返し地点”という人たちが多くなります。長い老後を安心して過ごすためにも、受け取れる年金収入がいくらなのかを、まずは『ねんきん定期便』で確認しましょう。長生きすることを想定して、年金をどれだけ増やすことができるのか。夫の定年前に把握することが大切です」
そうアドバイスするのは、社会保険労務士でファイナンシャル・プランナーの井戸美枝さん。今回の年金大改正で得するための条件として、井戸さんが教えてくれたのが次の3つ。
【1】受給開始年齢を遅らせる
受給開始を遅らせると最大84%もお得。
【2】なるべく長く働き続ける
健康なうちはリタイアなんかしない!
【3】できるだけ収入を増やす
納付金額が増えれば受給額もアップ。
「誰でもできるのは『年金の繰り下げ』ですが、その前に必ず、夫婦で年金収入がいくらになるのかを調べておきたいですね。『まだ先のことだからいいや』といって放置している人も多いようですが、遅くとも50代のうちに、年金収入だけで生活が成り立つのか、家計の見直しをしておきましょう。老後のお金がどれくらい足りなくなるのかがわかれば、いつまで働けばいいのか、いつまで年金受給を繰り下げればいいのか、といった方向性も見えてきます」(井戸さん・以下同)
「ねんきん定期便」は毎年、誕生日の月に届くが、夫と妻それぞれに届くので夫婦合わせていくらもらえるのか計算しよう。
また、その際に覚えておきたいのが、加入実績に応じた年間額(年額)から、社会保険料、所得税、住民税などを支払わなくてはならないということ。実際には1割ぐらい差し引いた金額が手取りの額になるという。そこから、生活費を差し引いてみると、年金の範囲内で生活が成り立つかどうか判断できる。
退職金や貯蓄を取り崩す生活を続けると、あっという間に資金が底をつく恐れがあるので、介護や医療費など“もしもの時”にも備えておきたい。「たとえば、夫の退職金が少なかった、住宅ローンの支払いが退職間際までかかってしまった、などの理由により、老後の貯蓄ができなかったという話もよく聞きます。老後の終身の収入は公的年金だけで、それだけでは生活費が足りない場合は『元気なうちはなるべく外に出て働く』という選択が現実的。その間、年金を繰り下げて受給額を増やすこともできます」
年金の繰り下げは、今回の大改正で受給開始年齢が70歳から75歳まで広がる。受給額は最大で84%アップし、たとえば65歳で年間
約78万円もらえる人は、70歳まで繰り下げると約110万円に増やすことができる。さらに75歳まで繰り下げれば約143万円にも!
ただし、むやみに繰り下げると、受給額が目減りするケースもあるので注意しよう。
■厚生年金に加入し、長く働けばメリットは大
短時間のパートやアルバイトでも、厚生年金加入のチャンスが生まれたのも特筆すべき点だという。社会保険の加入要件のハードルが下がり、週20時間、月8.8万円の収入の人でも加入対象になったのだ。
また、65歳以降も厚生年金に加入して働くと、毎年年金額が増える仕組みなのでやりがいもアップ。
「改正前は、65歳以上で老齢厚生年金をもらいながら働いていた人の年金受給額は、退職してからか、70歳を迎えるまでは再計算されませんでした。それが、毎年再計算されることになり、厚生年金の保険料を納めた分、すぐに翌年から受給額がアップしていきますので、働く意欲につながるでしょう」
いずれにしても「働き続ける」ことが大切なのだ。
さらに、個人が任意加入する私的年金を使って年金を増やす、という方法にも変化がある。個人型確定拠出年金のiDeCo(イデコ)は、これまで加入できる年齢が60歳未満だったのが、65歳未満に引き上げられるのだ。
「老後資金が足りない」という人は、仕事を続けながら、厚生年金に加入して、かつiDeCoにも加入すれば、もらえる年金の倍増も夢ではない。