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「父の他界後、母が認知症のため遺産分割できない」ケースが増加 事前の対策が肝に

女性自身
「父の他界後、母が認知症のため遺産分割できない」ケースが増加 事前の対策が肝に


親が高齢になると、急な入院や施設への入所時など、親に代わって手続きをすることが増えるが、親名義の銀行口座からお金を引き出すのは意外とハードルが高い。

窓口で身分証明書を提示させられるだけでなく、「本当に預金を下ろすのを子どもに頼んだのか」と、親本人に電話で確認を取られるなど、煩雑な手続きが必要になるのだ。なかには、結局、子どもが一時的に費用を立て替えざるをえなくなる、というケースもあるという。

「親御さんが認知症になったら、もっと大変になります。『預貯金を引き出せない』といったトラブルのほかにも、『親名義の自宅や株式を売れない』という事態が起こる恐れもあります。『うちの親は元気だからまだ大丈夫』と先延ばしにしないで、元気なうちから対策をしておくことが大切。認知症対策は『財産凍結』の対策でもあるのです」

こう語るのは、『親の財産を“凍結”から守る認知症対策ガイドブック』(日本法令)の著者で、司法書士法人ミラシア、行政書士法人ミラシア代表社員の元木翼さん。

2025年には高齢者の「5人に1人」がなるといわれている認知症。
それにともなう「財産凍結」について元木さんが解説する。

「高齢者が保有している財産が、本人の判断能力の低下によって使えなくなる、動かせなくなることを、財産の『凍結』といいます。具体的には、預貯金の引き出しができなくなるほか、定期預金の解約、株式や投資信託などの売却も難しくなります。不動産の売却やリフォームも同様です。こうした凍結は認知症に限らず、脳梗塞や事故の後遺症などによって判断能力を失ってしまったケースでも起こりえます」

■認知症の母親は遺産を相続できるのか?

「父が亡くなり相続手続きを進めようとしたら、母が認知症のため遺産分割協議ができず、相続手続きが止まってしまったーー」

こんな財産凍結のトラブルも最近増えているという。

「相続の手続きは、原則として相続人全員で行わなければなりません。たとえば、両親と長男、次男の4人家族で、父が遺言書や家族信託の準備をしないで他界したとします。そのときに相続人の1人である母が認知症で判断能力がない場合、遺産分割協議ができなくなってしまいます。
そうしたケースでは、成年後見制度の『法定後見』を利用し、認知症の母に代わる『後見人』を、家庭裁判所に選んでもらう必要があります。そして、その後見人が代理人として参加することで、ようやく遺産分割協議ができるようになります」

そう話すのは司法書士法人ミラシアの司法書士、永井悠一朗さん。

ただし、法定後見を利用すると、親族ではなく専門家が後見人に選ばれる可能性がある。

後見人はあくまで母の財産を守ることが役割なので、母の法定相続分(2分の1)を確保しようとするのが原則。もし、「子どもが法定相続分よりも多く財産を相続し、そのお金で母の面倒を見る」といったプランを考えていたとしても、そのとおりにいくとは限らないので注意が必要だ。

「父が認知症の母の面倒を見ているような老々介護のご家族も多いと思います。こうしたご家庭では、父が先立つケースを想定して、遺言書や家族信託で備えておきましょう。ご家族によって抱えている事情は千差万別です。
法定相続分どおりに相続を進めることが家族にとって必ずしも正解とは限りませんから」(永井さん)

日本人の平均寿命は女性のほうが長い。父が亡くなった後、残された母が認知症になっても生活できるよう、対策を講じておこう。

【PROFILE】

元木翼

司法書士、行政書士。司法書士法人ミラシア、行政書士法人ミラシア代表社員。相談業務や講演活動のほかメディアにも多数出演。近著に『親の財産を“凍結”から守る認知症対策ガイドブック』(日本法令)がある

永井悠一朗

司法書士。専門は相続、遺言、後見、家族信託。これまで100件以上の家族信託の組成に携わる

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