2022年4月17日 06:00
無罪訴え94歳になったアヤ子さん支える弁護士 国を許せない思い
アヤ子さんは79歳になっていた。
「第二次の再審請求に向けた会議のときでした。アヤ子さんは、参加した弁護士一人一人に頭を下げ、みかんやおまんじゅうを配っていました。この穏やかそうな人が、刑事からどんなに脅されても一度も自白しなかった鉄の女?と、いぶかしく思うくらい、普通のにこやかなおばあちゃんだったのです」
ところが、会議がはじまると、アヤ子さんの形相が一変する。
「『あたいはやっちょらん!』。こんなに言っているのに、なぜ、裁判官も検察官も信じてくれないのか。無罪になるまで、あたいは死んでも死にきれん」
燃え上がる炎のように抗議する姿に、鴨志田さんは圧倒された。アヤ子さんは自分のためだけに無罪を主張しているわけではない。
「娘たちには『殺人犯の子』だと、肩身の狭い思いをずっとさせとる。孫や曽孫、末代まで迷惑がかかる。それが、あたいには耐えられん」
共犯とされた次兄は、アヤ子さんの出所前に自死。夫も、離婚から3年で病死した。アヤ子さんと前後して再審の申し立てをした次兄の息子も、再審開始決定が出る前に自死してしまう。
「アヤ子さんの一家は、同じ敷地内に兄弟それぞれ家を建て、毎日、顔を合わせながら、農業を営んでいたんです。