カギは“言語の壁”を超えた面白さ!『モルカー』『はじめてのおつかい』が海外で大ウケする理由
『PUI PUIモルカー』公式ホームページより
「コンセプトに驚き、子供たちの冒険に釘付けになり、おつかいの成功を一緒に喜ぶのに十分な長さ」
米大手誌ザ・ニューヨーカーが日本の人気バラエティー番組『はじめてのおつかい』についてこのように表現した。同番組は1人で初めておつかいに行く子どもを追ったドキュメンタリー調の番組で、日本では1991年から日本テレビ系列で放送されている。
『はじめてのおつかい』の20エピソードが3月31日からNetflixで配信されると、アメリカのNetflix公式Twitterが取り上げるなど一躍注目の的に。海外ユーザーからの「エピソードを追加してくれ」「はまってしまった」といった熱狂的なコメントが殺到したという。
また、昨年1月から3月に日本で放映された『PUI PUIモルカー』(テレビ東京系)も、台湾では地上波テレビで週32回放送され、フランスのNetflix公式Twitterが『モルカー』のことを取り上げた呟きには、10万を超えた「いいね」がつくなど、こちらも世界的な人気を集めている。
世界でも好意的に受けとめられる日本発のテレビ番組たち。コンテンツビジネスジャーナリストの長谷川朋子氏は、その背景についてもともとの番組のクオリティの高さを挙げつつ、視聴環境が変化したことを指摘する。
「これまで日本のコンテンツを流通させるためには、海外の放送局に合わせて番組の尺や話数、言語の調整などさまざまなプロセスを踏む必要がありました。
ですが最近は、NetflixやAmazon Prime Videoなどグローバルネットワークができて、自由度が高くなっています。
視聴者にとってもNetflixなどの登場により視聴スタイルが多様化し、自国以外のコンテンツを見やすい環境ができたことも大きな要因の一つではないでしょうか」
■はじめてのおつかいが海外で好評の理由
さらに長谷川氏は『はじめてのおつかい』、『モルカー』がヒットした内容面での勝因に“非言語性”があると分析する。
「どちらもノンバーバル(編集部注:非言語)な面白さがありますよね。言葉の壁を越えて理解できる中で『モルカー』独特のシュールさがウケたのではないでしょうか。また『はじめてのおつかい』も番組コンセプトがわかりやすいですよね。登場する幼い子供たちが笑ったり、泣いたり、不安になったりする表情を見るだけで、日本語がわからなくても何をしているかが見ていればわかる。そうしたドキュメンタリーとしての面白さがあります」
1980年代後半にかけて一般人が過激なアトラクションに挑戦する様子が人気を博した、伝説のバラエティ番組『風雲!たけし城』(TBS系)。150以上の国と地域で放送されヒット作となった同番組は、23年にはAmazon Prime Video制作で復活し、全世界配信も決定。
『たけし城』が世界の人々を魅了する陰にも、 “非言語的な面白さ”があると、長谷川氏は言う。
「『たけし城』は一見単純に笑わせているようでありながら実はかなり緻密に作られていて、参加者も大袈裟なリアクションで笑いを取ったり、体を張ったりして映像としてのインパクトが強いですよね。また出演者が一生懸命にバカバカしいことに取り組む番組が海外で斬新に映ったのも事実です」
長谷川氏は、世界に通用する日本のコンテンツとして、これまで海外でヒットする日本文化のキーワードとしてあった「クール・ジャパン」や「kawaii」とは違う方向性を見出す。
「kawaiiやクールジャパンなどを日本人はイメージするかもしれませんが、海外でウケるのは意外なものだったりします。言語に依存しなくても伝える映像のインパクトや、奥ゆかしさや真面目さといった“日本らしさ”を感じさせることではないでしょうか」
果たして、『モルカー』『はじめてのおつかい』に続く日本の作品は――。