2022年6月4日 06:00
「歌を歌って」息子が歌手目指すきっかけ作った耳の聞こえない母からの“お願い”
安藤親子(右・一成さん、左・美紀さん)と聴導犬
第94回アカデミー賞で、作品賞・助演男優賞・脚色賞の3部門を受賞した『コーダあいのうた』(以下、『コーダ』)。
タイトルのコーダとは、“Children of Deaf Adults”の頭文字で、聴覚障がいの親を持つ子どものこと。映画は両親と兄の4人家族の中でただ一人だけ耳が聞こえる主人公の少女が、通訳として家族を支えながら歌うことへの夢を追う、コーダとしての葛藤を描いた物語だ。
じつは、日本にも映画と似た境遇の家族がいる。手話シンガーソングライターとして活動する安藤一成さん(27)の母、美紀さんは重度の聴覚障がい者だ。
「息子の声は聞こえません。でも、歌っている姿はとても輝いています」
そう語る美紀さんは、口の形を見て、相手が話していることを読み取ったり、言葉を話すことはできるが、生まれつき耳は全く聞こえない。
しかし、一成さんが歌に親しむようになったのは、耳が聞こえない美紀さんからのあるお願いがきっかけだったという。
「幼稚園の帰り道、自転車のうしろに一成を乗せると、私からは口の動きが見えず、おしゃべりをすることができません。