2022年7月10日 06:00
3代渡って通うお客さんも 名物立ち食いそば女性店主が見てきた人生模様
(撮影:田山達之)
【前編】高田馬場名物立ち食いそば屋が閉店に女性店主供する天玉そばの味染みてから続く
「天ぷらそば。おばちゃん、卵も落としてね」 「はい、いつもの天玉そば1丁!今日も暑いわねえ」
東京・JR山手線の高田馬場駅改札から、徒歩30秒。駅前の早稲田通りの横断歩道を渡ったすぐ角に、カウンターのみ8席の立ち食いそば「吉田屋」はある。
紺色のそば屋の暖簾のすぐ上に寿司屋の看板もある独特の店構えだが、その理由はのちほど。
〈かけ370円月見420円天ぷら470円〉
店頭のメニューでわかるとおりの良心価格と、関東風ながらさっぱりとしたうま味のだしがウリだ。
誰もが「馬場」と呼ぶこの街は、早稲田大学はじめ専門学校や予備校がひしめく学生の街。さらに山手線に加え西武新宿線と地下鉄東西線が乗り入れていてサラリーマンの乗降客も多い。
この立ち食いそば激戦区にある吉田屋で、次々と暖簾をくぐって訪れる常連客たちから「おばちゃん」と親しみを込めて呼びかけられていたのが、店主の草野彩華さん(73)。
ライトブルーに染めた髪の毛をトレードマークにして、昭和、平成、令和と、わずか3坪の店に立ち続けてきた。