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「やりたくなければやらなくていい」PTAから脱却した小学校の取り組み

女性自身
「やりたくなければやらなくていい」PTAから脱却した小学校の取り組み

地元商店街と協力し、商店街を子供の遊び場に(写真提供:嶺町小PTO)



7月9日、東京都小学校PTA協議会は、日本PTA全国協議会(日P)からの脱退を決めた。会員から集めた会費の半分を日Pに納めてきたが、負担に見合うメリットがないなどが理由だ。

そもそもPTAは、学校ごとの組織が市区町村の協議会に所属し、さらに各都道府県の協議会、そして日Pに所属するというピラミッド構造だ。頂点である日Pには、全都道府県と政令指定都市の64のPTA団体が加入し、傘下に約800万人の会員がいる。そんな強固な組織がいま崩れようとしている。その背景に渦巻くのはPTAそのものに対する不信感だ。都内の小学校に通う子供がいる40代会社員の女性はこう語る。

「登下校の見守りや運動会の手伝いなど、子供のためと思える仕事は喜んでできるのですが……。
保護者向けの講演会の主催とか、教師との親睦会の手伝いとか、“これって子供のため?”と疑問符がつく活動が多いんですよね」

さらに、家庭事情の多様化が事態を複雑にしているという。

「うちの学校のPTAは役職や係ごとにポイントが割り当てられていて、卒業までに既定のポイントを獲得することが求められます。共働き家庭も、専業主婦家庭も、シングルマザー家庭も、必要なポイントは同じなので家庭事情によって負担感がまったく違うんです」

■「やりたくなければやらなくていい」

多くの親たちを悩ませてきたPTA活動。だが、PTAという組織をまったく別のものに生まれ変わらせた学校がある。東京都大田区立嶺町小学校だ。

「発端は、PTAのブラックぶりに気付いた2012年度のPTA会長が行った保護者アンケートです。90%以上の回収率で悲痛な意見が多かったそうです」

そう話すのは、PTAならぬPTOの5代目団長の星義克さんだ。アンケートには、小雪の降るなか赤ちゃんをおんぶして古紙を回収したとか、ベルマーク作業のために有休をとったが「お金を払ってもいいからやめたい」とか、保護者たちの切実な訴えが詰まっていたという。


「会長の意見だけでは動かなかった当時の役員たちも、アンケートを見て『変えていくしかない』と舵を切ったそうです」(星さん)
2014年度のお試し期間を経て、2015年度からPTOという新しい組織になった。PTOとは“ペアレント-ティーチャーオーガニゼーション”の略。「保護者と先生による楽しむ学校応援団」と定義づけているという。

変革でまず取り組んだのは(1)やらないといけない義務感、(2)やらされているという強制感、(3)やらない人がいる不公平感の“3本のや”をやめることだった。保護者の役割とされた6年間で1回の委員と年1回の行事係を廃止。できるときにやりたい人が手伝うボランティア制にした。

「やりたくない人はやらなくていい。活動しない人がいてもOKです」と、副団長の蒔野美登里さん。
不公平感が募りそうだが……。

「本来ボランティアは、やりたい人が率先してやるもの。人が集まらないような活動なら、やめるという選択肢もあります。活動のスリム化を第一に、『前例踏襲』をやめました」(星さん)

苦情の多かったベルマーク回収や古紙などのリサイクル活動もいったん廃止したという。

「ただベルマークは『おしゃべりしながらの作業は楽しいからやりたい』人もいて『ベルママ』という親のサークル活動として復活しました。やりたい人がやってくれるなら大歓迎です」(星さん)

■「変わらないPTAは淘汰されていく」

PTA時代は本部役員と各種委員会がいるトップダウンの組織だったが、PTOになってからはボランティアセンター(ボラセン)のスタッフ約40名とイベントごとに手伝う“サポーター”で構成されるフラットな組織形態になった。

「ボラセンは実行部隊ではなく、サポーター集めや役割の割り振りがメインの調整係。多くの人が協力したくなるように工夫するのが役目です」(蒔野さん)

そのために、いつどんな役割をするのか明確にすること、事前準備がいらない活動にすること、運動会のサポーターをすると競技の写真が撮りやすい詰め所が利用できるなどメリットを提示することなど、募集方法を工夫している。


「参加して『子供の笑顔が見られた』『親も楽しめた』と思ってくれたなら、次も協力してくれます」(星さん)

コロナ禍でも、工夫して活動を続けている。

「ボラセンを中心とした保護者が発案した『クイズラリー』を2020年度から実施しました」(蒔野さん)

商店街や町会の掲示板にクイズを張り、子供たちは冬休みの好きな時間に回って答えを探す。密を避けて楽しめ、子供たちや商店街の人に大好評だったそう。PTOになって今年で8年目。

「転校生の保護者や異動してきた先生はびっくりされます。PTOにはやりたい活動があり、予算があって、手伝ってくれる人もいる。最高です」(蒔野さん)

PTAに詳しい文化学園大学の加藤薫教授はこう語る。

「2010年ごろから、新聞やテレビの報道などがきっかけで、PTAは強制加入ではなく、入退会が自由だという認識が広がり始めました」

さらにここ数年で、個人情報保護法が厳格に運用されるようになった影響も大きいという。


「学校から保護者名簿が提供されなくなり、PTAは『入会届』を集める必要が出てきました。その結果、大分市や北九州市でPTAの加入率30%という学校も見られます。これからは保護者が加入するかどうかを選ぶ時代。古いままのPTAは選ばれず、淘汰されるしかないでしょう。PTAは変革を求められているのです」(加藤教授)

理不尽なPTA、辛いばかりのPTAはもういらない。嶺町小学校のような変革が求められている。

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