2022年9月25日 06:00
精神科医・香山リカさん 北海道で僻地医療に取り組む新たな生き方選んだ理由
患者のほうをのぞき込み、細かく、ていねいに状況を聞き出す。
「ひとつの考えとして一度、薬をやめてみましょうか。すこし様子をみてみましょうね……」
■長いカウンセリングのキャリアが、僻地のお年寄りに寄り添う、ケアに役立って
夏目所長は穂別での香山さんの診療ぶりをこう評する。
「高齢者が多い穂別では『寄り添う治療』が大事です。中塚先生は精神科医の経験を生かし、患者さんが何に苦痛を感じて困っているのかを自然に聞き出している」
香山さんの長いカウンセリングのキャリアは、僻地でのお年寄りのケアに役立っているのだ。
そして彼女自身、穂別での人とのつながりを、楽しんでいる様子でもある。
「東京との往復生活と聞いただけで、高齢の患者さんは『大変なところ、ありがとうございます』と言ってくれます。私は総合診療のキャリアはまだまだで、薬によっては調べ調べ、処方箋を書くんですが、なんにも文句を言わず、おだやかに待ってくださるんです。
『地域医療に貢献するために』と穂別に来たのに、スタッフや住民の方に助けられてばかりです」
目尻に皺を寄せ、はにかむように香山さんは言った。
「いないよりはまし。