10月の値上げが“宅飲み”を直撃 缶ビールとチーズで月2000円の負担増!対策は?
相次ぐ値上げの波は、コロナ禍で普及した“宅飲み”にまで及ぶことに。毎日の晩酌を楽しみにしているという人も多いが、何も対策を講じないでいると、支出の大幅増を招きかねない。
10月1日、食品が一斉に値上げされた。帝国データバンクによると、10月は今年最多の6700品目が対象になるという。
値上げの波はいったいどこまで続くのか。
経済評論家の加谷珪一さんは、食品の値上げの背景と見通しをこう解説する。
「昨今の値上げの原因は、原油価格や輸送費、人件費などの高騰が重なったものです。コロナ禍にウクライナ問題と世界で重大事が続き、値上げが止まらなくなりました。
その波はまだまだ続くでしょう」
そしてこの値上がりサイクルは、「商品の性質によってタイムラグが生じる」と加谷さん。
「パンなどの小麦由来の食品は、製造費のうち原材料が占める比率が高く、加工品度が低い。真っ先に値上げされる食品群です。
そこから徐々に原材料比率が低く、調理やパッケージングなどの手間がかかる食品へと、値上げされる品群が移っていきます」
ではかっぱえびせんなどのお菓子や加工肉などで、今年に入って2度目の値上げがされる理由は?
「本当は2割以上の値上げをしたくても、一気に上げてしまったら売れなくなってしまいます。まずは買ってもらえるギリギリのライン(たとえば10%増)で値上げしたものの、その後の物価高騰に耐え切れず、再値上げするというパターンがあると思います」(加谷さん)
今月値上げされる食品のなかでは「酒類・飲料」のカテゴリが2991品目に上り最多となる。「一番搾り生ビール」「スーパードライ」など10月に初めて値上がりしたビール類は、何度も値上げされているパンのように「麦」由来の商品。
それなのになぜこのタイミングで価格が上がったのかーー。
■ビールの値上げには酒税改定の影響も
「ビールは確かに麦由来の製品ですが、製造費のうち原材料は15%程度と低く、逆に25~30%と高く占めているのは酒税です」
その酒税は来年に改定される。
ビールの税率が下がり、発泡酒は据え置き、一方で新ジャンル(その他の醸造酒、リキュール等)が大幅にアップされる予定なのだ。
「いま売れている新ジャンルは来年の値上げで一時的に売り上げが落ち込むと予想されます。そのため、いまのうちに主要商品であるビールを値上げしておくべきと判断したのかもしれません」
ビールと同じく値上げされた「竹鶴」「ジョニーウォーカー」などのウイスキーについて加谷さんはこう解説する。
「海外で人気が高い『山崎』などを国産ウイスキー最大手であるサントリーが4月に値上げしていました。世界各国の高価格に国内価格を近づける狙いがあったと思われ、他社も並んだ格好です」
酒類の値上げには、14日に147円台に突入した「円安」状態の影響もあるのではないだろうか。
「ワインなどはとくに円安に影響されます。11月解禁のボージョレは、フランスで100%瓶詰めまでされたものを輸入するので、契約時の為替レートが値上げ幅に大きく影響するでしょう」
チーズや生ハムなどのおつまみの値上げにはこんな背景が……。
「昨今、急激な経済発展を遂げているアジアなどの新興各国では、食も高級志向になり、チーズや生ハムなどの”贅沢品”の価格が世界的に上がっているんです。
また、輸入量が多いチーズや生ハムは円安の影響で、さらに価格が上がっています」
このように晩酌で並ぶほとんどの食品に、値上げの影響が及ぶ。
毎日ビール1本とチーズを楽しんでいる場合、夫婦で月2000円の家計負担増にーー。
私たちが「失われた2000円」を取り戻すためには何が必要なのか。
生活経済ジャーナリストの柏木理佳さんに教えてもらった。
「まずは食品の『最安値』をスマホやPCでチェックすること。全国の価格情報を扱うサイト『価格.com』では食品も扱っていますので、最安値や平均的な値段がいくらなのかを把握しましょう」
次に探すのは、プライベートブランド(PB)商品だという。
「ビール類をはじめ、PB商品でそろうものは多いので、出費を抑えるのを最優先にしたい食品の場合は積極利用するといいでしょう」
さらに、金券ショップでビール券や商品券を数パーセント程度安い値段で買い、商品をスーパーやショップで購入する方法も。
「金券ショップでの注意点は、購入する商品券などを必ず目当ての店で使えることを確かめてから買うことです」
飲み方を変えるのも一つの手だと言うのは前出の加谷さんだ。
「『ビール×チーズ』のような値上げ率の高いものではなく、価格がほとんど変わらない国産の米を使った『日本酒×おせんべい』に変えると値上げの影響が少ないかもしれません」
買い方×飲み方を工夫し、負担を最小限に食い止めて、値上げの波を乗り切ろう。