愛あるセレクトをしたいママのみかた

93歳の推し活がバズり中!闇市にも浅草にも松潤ほどの男はいない!

女性自身
93歳の推し活がバズり中!闇市にも浅草にも松潤ほどの男はいない!

93歳の看板娘・千恵子おばあちゃん(右)と嫁で佃煮の仕込み担当の裕樹子さん



〈肉は脂ぎってるほうがいい93歳〉(9月22日)

「こういうの好きよ、グーね」

食卓に並んだ好物のスペアリブを前に、あえてギトギトの軟骨をつかみ取っては、ためらいなくかぶりつく“肉食系”おばあちゃん。

〈韓国語で「ありがとう」と言いたい93歳〉(5月5日)

韓流ドラマをもっと楽しみたいと、韓国語にチャレンジ。「カムサハムニダ」と言うつもりが、「パンにハム」など、すんなりと言えずに落ち込む。

ひたすら明るい祖母の、さりげない日常の姿を写真や動画などで紹介するインスタグラム「千草屋のおばあちゃん(93)」が今、日本中でバズり中。

その主役が、草間千恵子さん(93)。東京・浅草の小さな佃煮屋「佃煮処千草屋」の店主だ。

91歳でスマホデビュー。やがてツイッターやインスタなどSNSで、江戸っ子らしい丁々発止の家族との会話や、いまでも現役の仕事ぶり、さらにはアイドルの追っかけをする様子などが紹介されると、たちまち日本中から「コロナで落ち込んでましたが、元気いただきました」「何げない言葉に年輪を感じます」とコメントが押し寄せて、一躍、フォロワーも1万人超えの人気者に。


「あたしはふだんどおりにしてるだけなのに、最近は北海道や沖縄など日本中から『いつも見てます』というお客さんや修学旅行生が店までやってきて、握手されたり、一緒に写真を撮ったりするから驚いてるのよ。はい、おかげさまで、売り上げもそれなりに(笑)」

10月半ば、取材にうかがった日も、千恵子さんは店先で、ガラス張りの商品ケースをはさんで、お客と会話を楽しんでいた。

「はい。葉唐辛子の佃煮としそ昆布ね。ごめんなさいね、あたし、こんな商品台に寄り掛かっちゃって。なにせ年なもんで」
「“93歳の看板娘さん”ですもんね。インスタで見ました。お会いできてうれしいです」

練馬区から来たという60代の女性は、「離れて暮らす母親を思い出しました。
お元気で長生きしてくださいね」と言い残して、やっぱり笑顔で帰っていった。

「お客さんが喜んでくれる顔が、あたしのエネルギーだね」
自他ともに認める話し好きで、それこそが「健康法」。たしかに、2度のがん闘病を経験し、現在も要介護1の認定を受けているようにはとても見えない。

■3歳から一家のご飯炊き。10歳でリヤカーを引いて魚を売り、戦後は闇市でラーメン屋を

1929年(昭和4年)4月6日、浅草の生まれ。

「12人の大家族で、きょうだいは女が3人に男が7人。父は都電の会社で働いてましたが、仕事より趣味やおしゃれが大事という人。その分、母が浅草で辻占(街頭の占い)をしたりしてましたけど、貧乏は変わらなかったわね」

いちばん上の姉とは、ひと回りも年が離れていた。


「小3で千住の借家に引っ越すんだけど、貧乏生活を嫌った長姉は、親戚の芸者の置屋に住み込みで行っちゃった。次の姉も長女の華やかな暮らしぶりに憧れて半玉(芸者見習い)になるんです。

だから、無骨で芸事も嫌いなあたしが家に残って、長女代わりで3歳からご飯炊きでした」

10歳のとき、2番目の弟が原因不明の難病になる。

「百日咳から両手両足が壊死して、すべての指の先を切断しました。母は41歳で産んだ末の赤ん坊がいたから、弟の入院の世話をはじめ、あたしが一家の大黒柱で働くしかなかった。だから、小学校には通ってません。

それからは、リヤカーを引いての魚売り。のちに退院した弟も手伝ってくれるんだけど、やっぱり疲れて泣くの。
元気づけようと荒川の土手でひと休みしながら、当時はやっていた“♪泣くな妹よ”という歌を歌ってあげて。だから、今もテレビの懐メロ番組で、その歌が流れると泣けちゃうのよね」

ずっと快活な口ぶりだった千恵子さんが突然涙ぐみ、当時の苦労の大きさが伝わるのだった。

戦後も一家の働き頭が千恵子さんであるのは変わらなかった。

次には、北千住駅前の闇市でラーメン屋を始めた。

「この1杯5円のラーメンは売れに売れて、当時の大卒銀行員の初任給と同じくらい稼いで、1年で4000円ためました。でも、お金よりうれしかったのは、無職だった父が手伝ってくれたこと」

これで、ようやく生活も落ち着くかと思ったら、千恵子さんは思いがけない行動に出る。

「あたし、ええかっこしいで、小さなラーメン屋で終わりたくなかった。できるなら、東京のど真ん中で働きたいと思ったの」

■呉服屋、佃煮屋と働きながら、80代半ばになって、テレビに出ていた松潤に釘付けに
千住から現在の浅草5丁目に引っ越して呉服屋を開いたのが20歳のとき。


屋号の「千草屋」は、ここから始まる。すぐ近くには、あの吉原大門もあるが、観光名所の浅草寺などとは少し離れていた。

「あたしは10歳から団子やラーメンを売ってきて、商売には何が大切かを身に染みてわかっていました。だから、ほかの店がやってないアイデアで注目してもらえるよう工夫したんです。

着物を買ってくれたお客さんにお土産を持たせたり、民謡教室の催しに呼ばれると着付けまでやったり。当時、『時給1万円の女』と呼ばれてたの(笑)」

結婚してすぐに、3人の子供にも恵まれた。

「ただ、長男は5歳のときに川に落ちる事故で亡くなりました。そのつらさを忘れようとするように、夫婦で死に物狂いで働いて、おかげで40年もの間、店を繁盛させることができました」

やがてバブルが崩壊し、和服を着る人も減り、さらに夫も亡くなったことで、千恵子さんは廃業を決意する。
驚くのは、ここで隠居生活に入るどころか、70歳にして新たに起業したことだ。

「だって、健康なら、働くことは楽しいじゃありませんか。で、何をするかって思うの。そのときひらめいたのが、呉服屋時代にお客さんに持たせていた佃煮でした。

その佃煮も最初はよそから仕入れてたの。でも、おいしくないのよ(笑)。だったら自分でと、手作りしてたんです。特に自慢は、葉唐辛子の佃煮。
よし、これをオリジナルの売り物にしようと」

同居していた次男の隆さんと裕樹子さん(60)夫婦も手伝い、家族経営の佃煮屋で、千恵子さんは70代、80代と、またも必死に働き続けた。

そして80代半ばになった、ある日の夕食時だった。孫娘の麻咲子さん(32)と見ていたテレビに、千恵子さんは釘付けとなる。

「アップで映っていたのが、『VS嵐』に出ていた松本潤さん。ひと目ぼれよ(笑)。

どこがよかったか?そりゃ、男は顔よ!濃い眉、スッとした鼻筋という、キリリとした顔立ちのイケメンが、あたし、大昔の大映映画のころから好きなのよ」

以降、松本潤や嵐が登場する番組はすべて録画して、何度も見返すことが日課となる。

こうして始まった「推し活」だったが、まさか、そんな自分の日常がSNSに上げられ、日本中の話題になるとは夢にも思っていなかった。

■〈松潤の大河まで死ねないおばあちゃん〉。孫がツイートしたらいきなりバズって

「最初は、おばあちゃんの90歳の誕生日に、ツイッターに家族で祝ったときの写真を上げました。ただ、これは私自身の思い出のつもりでした。大好きなおばあちゃんが、90歳という大台に乗ったことのお祝い、記念として。

ですから、本人にも家族にも友達にも内緒だったんです」

麻咲子さんが、千恵子さんの密かなSNSデビューについて語る。3年前の4月6日のことだ。

こうして、祖母が嵐や韓国ドラマに夢中になっている様子などが、孫娘によって次々とツイッターにアップされていった。

なかでも多いのが韓流の話題だが、長生きの秘訣であり、80代になってハマったというその魅力について千恵子さんは、

最初は、『愛の不時着』のヒョンビンから。『梨泰院クラス』のパク・ソジュンも好き。

韓国ドラマのどこがいいかって?美男と美女しか登場しないじゃない。そりゃ夢中になってるうちに、イヤなことなんて忘れちゃうわよ」

突然、家族の生活を一変させる転機が訪れたのは、’21年1月のこと。

大好きな松本潤が、’23年の年明けから始まるNHK大河ドラマ『どうする家康』で主演することが報じられたとき、草間家の居間ではこんなやりとりがあった。

孫「おばあちゃん、たいへんだよ。2年後、松潤が大河主演だって」
千恵子「ええっ、じゃあ、あたし、あと2年は死ねない」
嫁「お義母さん、2年じゃダメよ。放映が1年続くんだから」
千恵子「そうか!じゃ、あたし、まだ3年は死ねないんだ。松潤のおかげで、また寿命が1年延びたわ!!」

この“大河騒動”を、麻咲子さんは、早速、ツイッターにアップした。タイトルは、

〈松潤の大河まで死ねないおばあちゃん〉

「そしたら、これが、いきなりバズっちゃって。もっとちゃんとやらなきゃと思って、それからインスタがメインとなり、画像だけから動画も増やしていったり、BGMも工夫したり。

最初から大切にしていたのは、きれいに見せることではなく、おばあちゃんの、ありのままの“素”を伝えることでした」

麻咲子さんはそう思って続けていたというが、驚いたのは、当の千恵子さん。

「だって、最初は知らなかったんだもん。言っちゃえば、隠し撮りでしょ(笑)。もう、恥ずかしかったわよね。

あたしは人一倍の感激屋。だから、好きな推しを応援するのも真剣。そんな姿が笑い話になって、みんなが元気になるっていうし、実際にお店まで会いに来てくれるようになったでしょう。少しは、世の中のお役に立ててるのかなと思ったら、それも、おもしろいじゃないか、って」

裕樹子さんはいう。

「インスタを見て店まで会いに来てくれる人が増えたおかげで、義母は20歳も若返りました。来年、松本潤さんのドラマが始まったら、どうなるんでしょうか(笑)」

【後編】83年間働きづめの名物女将・草間千恵子さん。93歳の推し活がバズり中!へ続く

提供元の記事

提供:

女性自身

この記事のキーワード