2022年12月30日 06:00
元秘書・長尾玲子さんが初告白 寂聴さん、たった一度の弱音「私、傲慢だったわね」
全作品を読み返した私ですが、瀬戸内は、病気をする前、作品中に自然描写のほとんどない作家でした。それが、あの大病を境に、ものの見方も、文章も明らかに変わりました。早くも療養中のエッセイから水彩画のような自然の色や描写が出てくるんです」。
■出会いから60年超ーーもっとも近くにいた“相棒”が心に刻み続けた奔放作家“心の声”
「これは誰にも話したことがなかったんですが、先日、瀬戸内の出家について考えていて、思い出した会話があったんです」
くも膜下出血での退院後、2人で寂庵を散歩していたときのことだという。寂聴さんが庭の緑を見ながら、ぽつりとつぶやいた。
「私、傲慢だったわね」
「どうして?」
珍しく弱気な言葉を発する寂聴さんに、血縁の気安さもあって率直に尋ねた長尾さんだった。すると、こんな答えが返ってきた。
「去年は咲いていた名も知らない花をすっかり忘れちゃっても、また1年たって同じ花が咲いている。
それを当たり前だと思っていた私は、すごく傲慢だった」
そもそも出家後、寂聴さんは、来し方を顧みるような言葉を幾度も発するようになっていた。
「傲慢だったというのは男女関係のこともあったのでは。