シンガー・ソングライター小椋佳 もう燃え尽きた…でも、余生も愛燦燦
それで病院に行って、若い先生が家内としゃべっているとき、書類をのぞいたら『入院事由:胃がん』って書いてあるんですよ」
すぐに死を連想した。でも、恐怖も驚きもなかったという。
「銀行員時代は接待やなんやで飲み歩き、血糖値が400もあったんですよ。母親は59歳のとき、糖尿で亡くなっているから、ボクも50後半で糖尿で死ぬと覚悟していた。それが胃がんだっただけ」
手術は8時間にも及び、胃はほぼ全摘出。現在も食事することが挑戦だという。
「普通の人の3分の1くらいしか食べられない。寿司屋に行ったって、シャリが食べられないんですから。
ただ、なぜか貝類だけは胃を通るんで、貝のお刺身と、熱かんの酒を飲むだけ。ふだんは、家内が作ってくれるお弁当をね、2度に分けて食べるんです。でも、そのおかげで、銀行員時代には80kgあった体重が、今は50kg台ですからね。すると糖尿病が改善しちゃった。変な話、がんのおかげで長生きしてるようなものなんですよ」
大病をしたこともあり、食事面を含め、妻の佳穂里さんはかいがいしく寄り添ってくれたが──。
「小さいときはおふくろ、結婚してからは家内に依存。衣食住には全く無関心の人生を生きてきちゃったわけですよ。