『ドキュメント72時間』のテーマ曲「川べりの家」は5分で完成!松崎ナオが明かす秘話
「レコード会社の方が『レコードにしたい』と言ってくれたんです。もう15年前にリリースした曲だから、『えー!』と驚きましたけど、でもレコードを作るっていうのは多くのミュージシャンが抱く夢でもありますし。私にとっても初めてのレコードだから、嬉しかったですね」
こう語ったのは、ミュージシャンの松崎ナオ(47)だ。
人気番組『ドキュメント72時間』(NHK総合)のテーマソング「川べりの家」で知られる松崎。同番組の第2レギュラーシーズンが始まったのは’13年4月5日で、数えてちょうど10年。それに先立って、昨年12月には「川べりの家」が7インチのレコードとして再リリースされた。
第1シーズンの’06年10月からテーマ曲に起用され、今や番組にとって欠かせない存在である「川べりの家」だが、番組に起用された経緯は「ほんとに奇跡だった」と松崎はいう。
「『ドキュメント72時間』の音響効果の担当者さんが『番組に合う曲はないかな』と思ってレコード店に行ったら、ちょうどこの曲が店内で流れていたそうです。
店内で流れているってことは、この曲の収録されたアルバムの発売日だったはず。たまたまこの曲を耳にした担当者さんは『この曲だ!』と思ったそうで、偶然に偶然が重なった形です。
その後、こちら側に連絡があって、スタッフの方々を交えてご飯に行きましょうと誘ってもらって。そこで『曲を番組に使いたい』と直談判されました。偶然の出会いだったからこそ、担当者さんも嬉しかったみたい。私も喜ぶ姿を見て『よかったなー』みたいな(笑)」(以下、カッコ内は松崎)
番組では毎年、年末スペシャルを放映しており、その最後に松崎が「川べりの家」をライブ演奏で披露するのも“おなじみ”となっている。
「毎年緊張していますよ(笑)。スタジオにはたくさんの人がいて、みんなに囲まれて『はい、どうぞ』みたいな感じで歌い始めます。
あまりテレビで歌い慣れていませんし、普段のライブとも少し違う感じ。それに、この曲ちょっと歌うのが難しいんです。淡々としているからなのかなぁ」
■たったの5分で完成!「物足りないのがいいのかも」
番組に「川べりの家」が起用されたことで、松崎の状況も少しずつ変わっていったという。
「この曲はリリースされた当初も『ドキュメント72時間』に使われ始めたときも、それほど反響はなくて。曲の感想を貰うようになったのはここ3、4年のことです。ジワジワと広がっているみたいで、町を歩いているときに『川べりの家の人ですか?』と言われるようにもなりましたね。
あと、ライブにご年配の方が来られるようになったんです。それも60代、70代くらいのかたに来ていただくようになって……。
私のライブ、けっこううるさいので大丈夫かなって最初は不安でしたけど(笑)。でも、いつも楽しそうにしてくださるので『よかったなぁ』って思いますね」
そんな松崎だが「『番組に曲を使いたい』と言われたとき、最初は『この曲でほんとにいいんですか?』って思ったんですよ」と明かす。実は「川べりの家」は5分でできた曲なのだ。
「この曲を作ったとき、川べりに引っ越したかったんです。本当にそのまんまなんですけど(笑)。電車でたまに、中州の真ん中にポツンと家があったりするのを見るたびに『帰りづらい家に住むのっていいな』って思っていて。でも実際には難しいし、じゃあ想像で川べりの家に引っ越しちゃったことにしようと思いつきました。
それで、川べりの家に住んでいることをイメージしながらピアノを弾いていたら、この曲がスルッと……。
何にも考えずに5分くらいで、いきなりできました。だから、手応えゼロ(笑)。多分、無意識で曲のイメージを積み重ねていたとは思うんですけど」
曲ができた当初は「短い曲だし、なんか物足りない」と感じていたという。しかし、今では「その物足りない感じがよかったのかも」と考えるようになったようだ。
「番組で流れているのを聞いて、『番組の最後のパーツっぽいな』と思ったんですよね。少し足りないからこそ番組に馴染んでいて、視聴者のかたの邪魔にもなっていないのかなって。もしかしたらこの曲の反応がじんわりと広がっていったのも、あまりにも番組に馴染みすぎていたからなんじゃないかな。『愛されるのに時間がかかる曲って、いいなぁ』って思います」
これからも「川べりの家」は、じわじわと人々の心に染み渡っていくことだろうーー。