2023年4月2日 06:00
東京・赤羽「三益酒店」の三姉妹 枯れかけた昭和親父の酒店「もう一度、咲かせます!」
お客さんに話した私のお酒の説明が気に入らなかったみたい。当時、私は20代前半と若かったから。もう、父の言葉がショックすぎて寝込みましたよ」
少し年の離れた三女・美香さんは、こう振り返った。
「そのころ、私はまだ中学生かな。お姉たち、父によく泣かされてましたね。『大変だな』って思いながら見ていましたけど」
三姉妹はいかにして父の存在を乗り越え、新しいタイプの人気酒店を作り上げてきたのだろうか。
■父からは「ここは俺の店だ、勝手なことするな!」「出ていけ!」と怒鳴られっぱなし
「お父さんと2人じゃ、もう無理。お姉ちゃん、帰ってきて」
15年ほど前。
美保さんのもとには、連日、由美さんが泣きながら発する“SOS”が届いていた。
都内の四年制大学を出た後、大阪の商社に入社した美保さん。いっぽう、2歳下の由美さんは、姉と同じタイミングで料理の専門学校を卒業。すでに家業を手伝っていた。美保さんが言う。
「そのころ、ずっと父を支えてきた母が病気で倒れてしまって。父は鉄砲玉のような人で、契約を取り付けるために地方に出向くと、何日間も行きっぱなし。一つの酒蔵だけじゃ飽き足らず、次、また次と行っちゃうから。