2023年4月2日 06:00
東京・赤羽「三益酒店」の三姉妹 枯れかけた昭和親父の酒店「もう一度、咲かせます!」
だから入院した母の代わりに、まだ20歳そこそこの妹が、店のことほとんどすべてをやっていたと思います」
美保さんは入社した会社でキャリアアップを目指そうとしていた。そのいっぽうで、幼いときから両親が苦労を重ねて働く姿を間近で見ながら「お酒は日本の大切な伝統文化」という思いも強かった。
「父母の代で店を畳んでしまうのはもったいないという気持ちもありました。だから、いつかは自分が戻ることになるんだろうな、と思ってはいたんですが。そのいつかが思いの外、早く来てしまって」
入社から2年足らずで、美保さんは家に戻ることになった。
「でも、一度外の社会を経験して戻ってみると、家業のあらばかりが目につくようになったんです」
彼女が先に述べたとおり、当時の三益酒店はかなり年季の入った、傷みの目立つ店舗で営業していた。
「雨漏りがひどかった。それに壁にもボコボコ穴が。
でも、当時のうちには先立つものが、店の修繕費がありませんでした。それに何より『そんなお金があったら、買い付けに使う』というのが、父の考えだったんです」
父・孝生さんの信条は「ぼろはまとえど心は錦」そのものだ。
「たとえ店がオンボロでも、そこにいい酒さえあればお客は必ず来る。